Krabi Asian BP ノート
ABP2017のブログをいっぱい(本文、おまけ1、おまけ2、おまけ3の四部構造!!!)淳さんが書いてくれました!多分過去最長規模!国際大会に関する詳細の情報も書いてくださっています。どうぞお読みください。
こんにちは、18期の住田です。Asian BPに参加したのでブログを書かせていただきます。去年は執行部で国際渉外を担当していたので、ただの感想文に終始するのではなく、大会システムに関することや海外大会一般に役立つ情報も書けたらなと思います。
1. ABPへ参加する経緯
春Tが終わったあたりに田村くんから誘われて組みました。一度は全アジア大会に参加してみたいなと思ったので日程の都合上少し悩んだものの参加することにしました。
目標は明確にシェアはしていませんでしたが去年溝さんと栗田さんが行ったOpen QFに行くことが暗黙の目標となっていた気がします。
2. 大会への準備
夏休み前半はWAD練、後半は大岡山練と本郷練を中心に参加しました。結構な頻度でボコられてはしょぼくれて帰ってた記憶があります。ラウンド練・プレパ練の他にはPM/LOを一対一でしたり、プレパの様子を藤田さんや溝さんに見てもらいアドバイスをいただきました。
特に先輩から客観的な意見を貰うことは、より素直に自分たちの弱点を把握することができて凄く大事だなと思いました。また昔の大会の思い出を振り返って良かった点・悪かった点を気軽に話すのも自分たちを客観視する上で重要だったと思います。
またABPに実際参加した同期や先輩から海外と日本の違い、および練習方法についてアドバイスをもらいました。主なものは下に箇条書きでまとめてあります。
3. 大会本番の感想
結果は11pt, 929speaks, EFL Champion、目標のオープンブレイクまで届かず悔しかったです。全体を通して初歩的なミスをなくすことが本当に重要だと感じました。どのラウンドで指摘されたミスも初歩的なものでしたし、これがオープンブレイクできるチームとできないチームとの差なのだなと思います。大きな国際大会だからと言って「すごい」アーギュメントが求められているわけではなく普通の話をミスなく立てることが求められているのかもしれません。
相手を予測した上で対立軸の把握したか・インパクトある帰結のイラストはしたか・結論は明示的に引いたか・自分と相手をちゃんと比較しているか・論題へのタイバックはあるか・ユニークな分析は出したか・Even if Caseは出したか・ダサい言い回しはしていないか・重要だと直感的にわかるコンテクストは出したか…どれも1年生の時から言われるようなことだからこそミスが致命的になりました。BPは相手以上に自分との戦いなのかもしれません。
大会中に各ラウンドの感想をメモを書いていたので少し手直ししたものを下におまけで載せておきます。
4. 海外大会にもっと出よう
どんな目的を持ってディベートしているかは様々だと思いますが、海外大会はどんな人にも役立つものだと思います。
もし「偉大な先輩方のようにUADCやワールズで実績を残したい」と思うなら1,2年生の早い段階から継続的に参加するべきです。最初の一回でうまく行くほど世の中甘くないです。試行錯誤を繰り返し海外の感覚に慣れたり、徐々に顔を覚えてもらったりしてやっとブレイクできたりするものだと思います。日本と海外で共通点も多くありますが、海外でなければあまり見ないモーションやスピーチスタイルもあるので、頻繁に出て慣れておくことは大事です。実際に国際大会で良い成績を残した先輩・同期の殆どは定期的に海外大会に参加しています。
また「国内大会で成績を残したい」と思う人にとっても海外大会は重要だと思います。高い実績を残したジャッジからフィードバックを貰えます、自分が今悩んでいる質問も答えてくれます。国内大会は短いスパンでチームを変えがちですが、海外大会は申し込みから本番の期間が長いので長期的にトレーニングすることができます。ただ漫然とパートナーを変えて2週間おきに大会に出続けるよりも効率よく上手くなれると思います。
これは1年生にも言えることだと思います。良いジャッジ・良いモーションに恵まれた教育的な環境でディベートすることがいかに1年生にとって重要かは明らかだと思います。納得出来ない負け方や理解できないアドバイスは混乱を生みますし、かえって自信や今後のモチベーションを削いでしまいます。また自分の知識を早い段階から客観視することは重要だと思います。「日頃先輩から貰うアドバイス(たとえばSQ/APなど)は果たして海外でも通用するのか?」「今後国内大会で得るフィードバックのどこに注目すべきなのか」を早い段階で見極められるか否かは長い目で見た成長率に影響してくるでしょう。
それに1年生でも意外と通用します。ここ最近のNEAOでは3年連続で1年生チームがオープンブレイクしています。また別の1年生が東南アジアの強豪フィリピンの大会PDOでWUDC ESL Grand Finalistと肩を並べてGF Judgeをしたこともあります。そこで得られる実績はどの学年大会の実績よりも評価されます。
あと、なんだかんだ3年生になると就活や院試で忙しくなるので海外大会に積極的に出られるのは1,2年生の間だと思います。その半分を無為にしてしまうのは本当にもったいないです。1年生にはまだ早いから海外大会の存在を教えなくてよいなんて言う人がいますが、それはとんでもないことです。1年生の貴重な機会を摘み取ってしまうことと実質的に変わりません。
海外大会はディベートを楽しめなさそうと言う人がいますが、そう言う人に限って海外大会に出たことがないように思えます。確かに感じ方は人それぞれですが一度は行ってみることをオススメします。海外の友達が出来ます、動画でしか見たことのないようなディベーターとも知り合えます、なによりも感動的なスピーチを直で見ることができます。多くの知り合いが海外大会で例え良い結果が出せなくても、また来年参加したいと言うのはそういった部分があるからだと思います。(ちなみに海外大会は、ブレイクナイトの規模も段違いです。今年のABPはホテルのプールを貸し切ってのプールパーティーでした。)
それにそもそも国内大会しかでないのなら、なぜわざわざ英語でディベートしているのでしょうか。数百人前後の小さなコミュニティの内輪で争い合うためだけでは決してないのではないかと思います。
確かに海外大会は高くて金銭的負担が大きいです。これは揺るがしようのない事実です。ただ国内大会にバンバン出ることも決して安くはないと僕は思うのです。国内大会は年に約25(うち学年大会は11)あります。地方大会なら交通費・宿泊費、大学によっては打ち上げなど交際費もあるかもしれません。この1つ1つが海外大会と意外と大きなトレードオフになってることに気づいている人は少ないかもなと思います。
こんなに長々と書いたのは、今年はジャッジ提供義務がN-3に大幅緩和され参加チーム数も76から100に増えた一方、日本からのチームは去年と比べ半減していた事実に少し危機感を覚えたからです。今よりもっと海外大会へ参加する人が増えても良いと思います。下に基本的な参加方法や参加する上で知っておくと良いことを(僕の少ない経験をもとにですが)まとめておきました。少しでも役に立てば幸いです。
5. 謝辞
数ヶ月間チームを組んでくれた田村くん、練習でいつもアドバイスを下さった先輩方(特に藤田さん・マークさん・溝上さん・世永さん)、大岡山練のために部室を貸してくれた榎本さん・ナタリー、海外大会のために事細かなアドバイスをして下さったAKさん、定期的に激励の言葉を下さった翔さん、本当にありがとうございました。
このABPに終わらず、これからもディベートを頑張っていけたらなと思います。
おまけ1. ABPに出る上で人から貰ったアドバイス
ABPに出る上で過去に参加した先輩や同期に質問をしてアドバイスをもらいました。今後参加する人に向けて箇条書きして載せておきます。
また大きな国際大会の雰囲気が伝わるような人の記事は(万結の書いたABP・UADCのブログ、栗田さんのワールズの記事、みつしさんがFBに書かれたワールズ紀行文は特に)読んでおくとよいと思いました。
・色んなアクセントをに慣れておく
特に南アジアのアクセントを聞き取りが苦手な人がいるかもな思いました。Debate IndiaといったYouTubeチャンネルはもちろん、RVDTやMSRMPDといった大会の動画は見ておくと良いと思います。
特にこの試合にはUT MARAのジャイナがいるので見ごたえがあります。(この動画で優勝したOGは今年のABPのSemi Finalistです)
・ABPの動画は必ず見ること、特に2015年は豊富
これは言わずもがなですが、2015年のタブのリンクはここにあるので順位も参考にしながら見ると良いと思いました。
https://docs.google.com/spreadsheets/d/16xhJjKR1i4OGIzkteMm53BbXkpnkBCZOQbcncXDxqOs/pubhtml#
・ロジック詰めるよりもfact, example
メカニズムにふわっとした理由を何個詰めるよりも、ケーススタディを投げたり、具体的なイラストをさらっとした方が評価されると思いました。
実際Pre Quarter(TH, as a consumer living in the first world, would boycott ‘fast fashion’.)のCOが「ファストファッションにより良い服へのアクセス性が高まり、先進国における貧困層がsocial ladderを登れる」といった議論をしていたのですが、メカニズムのステップを何個も詰めるのではなく「服が第一印象を決める!」というシンプルな話を綺麗にイラストして勝っていました。
・モラローにならないように気をつける
自らモラハイを捨てるようなことは決してすべきではないですが、Spirit of Motionに沿っていれば大丈夫だとは思います。ただ言い回しはすごく気をつけたほうが良いかもしれません。R5: In university where affirmative action for women exists, THW institute affirmative action for men in departments where they are underrepresented. で男性一般もジェンダーロールの被害者だよねという言い方をしたOGは4位だった一方、この具体的な状況における特定の男性たちは可哀想だよねという言い方をCGで1位だったので、微妙なニュアンスに気をつけないと危ないとは思いました。
・対戦相手とジャッジだけがモーションの前提知識を知ってるといったことはなんとしてでも避ける
R3: THBT Islamic authorities in Southeast Asia should issue a fatwa denouncing Wahhabism. で特に感じました。Wahhabismやサウジアラビアが具体的にどう東南アジアに影響を与えているのかを知らないのはまだしも、fatwaがどの程度の影響力を誰に持つものなのか(前例はないのか)や東南アジアにおけるイスラム教指導者は誰なのかあたりを知らなかったが故にマレーシア・シンガポールのチームに大きく差をつけられてしまいました。(去年のUADCでもIn democracies, THW criminalize the issuance of fatwas which contradicts the law of the land.とfatwaに関するモーションは出ていたので本当にもったいなかったです)
広く浅くでもよいので前提とされている世界観をどのモーションでも理解しておくと良いと思います。
・エンゲージは漏らさない(Closingでは特に)
これは日本でもよくいわれることではありますが、競り合ってるイシューでエンゲージし損ねた場合は特に致命的になると思いました。R2: THW allow direct-to-consumer advertising for prescription drugs and treatments. では僕たちがOOで述べたadvertisementのcharacterization(15秒程度で終わり情報量が少なく、それを基には包括的な判断ができない)に全くエンゲージせず、個人の趣向に合った治療が施されるという趣旨のケースを立ててたCGは結構評価を下げられていました。
ただエンゲージメントが大事とはいえ、コンストスピーカーの段階でたくさん出す必要があるかは不明です。ちなみに僕のチームは話し合った結果、僕がコンストスピーカーかつコンストの段階では全く反論をせずアーギュメントないしエクステンションを言うことに専念すると決めてましたし、それで問題なかったと思います。(反論が遅すぎてとれないと言われたことはありませんでした)
・5分でプレパして大会特有の忙しさに慣れておく
OGでパニクらないようOGの練習はしっかりする
まあ僕たちは8試合中4回OGをひいたので本当にそうだと思います。(ちなみに他の2回はOO、NAの大会みたいですね)
個人的に一見難しそうな知識を要求するモーション(R3: THBT Islamic authorities in Southeast Asia should issue a fatwa denouncing Wahhabism. やEFL SF: TH Support NATO’s Enhanced Forward Presence.など)でOGを引くとパニクりやすいのでIRやEconomyを中心に5分でやる練習をしておくと良いかもしれないです。
ちなみにOGで僕たちが失敗しがちだったことは主に以下の3点です。各試合の細かい部分は後に書きます。
1. 大まかな対立軸の把握 (R3)
トレードオフなのかゴール共有(方法比較)なのか
2. Spirit of Motionの把握 (EFL GF)
どういった議論がこの論題で求められているのか
コアとなる問いをどう立てるのが最も戦略的か
3. Even if Case・WCSの対処(EFL SF)
・インパクトでゴリ押すのがとられやすい
・ふわっとしたフィロはなかなか取られない
いわゆるプラとプリが不可分だからこそ、どちらかが欠けると大きく評価を下げられるのかなと思いました。あくまでも傾向としてプラや具体的なイラストが欠けがちというだけで、価値判断の部分が欠けたら欠けたで評価を下げられると思いました。現に R4: THW require all sports teams to be majority owned by members of local community. ではOGで企業が利益追求して選手やファンの意思が蔑ろにされている!というケースを立てたのですが、ジャッジの方には「企業が利益追求するのはただのファクトだから、なんで悪いの?」と言われてしまいました。
とはいえ僕たちは具体的な説明を欠かしがちだった上に、「具体的だけどなんとなくしか良さ/悪さがわからない議論」のほうが「悪い/良いといっているもののふわっとしすぎて何の話をそもそもしているのかわからない議論」よりかはマシだと思ったので、チームとしてはややいわゆるプラを重視していたと思います。
・FeminaziやIntersectionalityなど専門用語はさらっと伝わるのでたくさん覚えて使うとよい
実際使うと一瞬で理解してくれます。恐れずにバンバン使ったほうが良いと思います。(もちろんビッグワードにならないように具体的なイラストは欠かせないと思います)
おまけ2. 各ラウンドの反省文
R1
OG: UNIMAS2 OO: Swing CG: SUFE 3 CO:KEIO1 (2位)
OOのスウィングは今年のUADCで優勝したシャーメイのチーム、ジャッジはアチータ・ジェイコブで、OO・CO・CG・OGの順でした。
企業の話といわゆるバックラッシュの話をしました。相手からそのような反論は来てなかったものの「企業の話はフェミニストが人工子宮を優先しようがしなかろうが変わらないから関係ないんじゃない?」とあまり評価されず、バックラッシュの話だけしか実質的に評価されなかったことが印象的でした。KIDAも含めて思ったのですが、関係ない(ように聞こえさせてしまった)話は相手から指摘があろうとなかろうも自動的に評価を下げられる印象があります。(だからこそゼロ・ディフェクトのようにミスのないスピーチが求められるのかもしれません)
OOとの差はエクステンションの重要性でした。フィードバックの時に聞いたら、バックラッシュが深刻になりうる(フェミニズムがFemiNaziやmen-haterと非難されているといった)コンテクストをひいていたら重要性がよりクリアにわかったそうです。「Openingが何を言って、Closingはどう違って」とメタディベートをするのと同時に、そのエクステンション自体の重要性を直接示すことも大事なのかもしれません。
R2
OG: NLSIU1 OO: KEIO1 CG: IIUM2 CO: UI4 (3位)
チェアはCAのヤーンで順位はOG・CG・OO・COでした。(ちなみにこのラウンドで田村くんは81点もらっていました)
いわゆるイラチョ的な話とスティグマが生まれてしまうという話をしましたが、OGに完璧に対処されてしまいました。OGは製薬会社の影響を受けている医者の判断も信用できないよねというComparativeをセットアップしてオポの話をがっつり削り、Even if benefitを2重に立て、こちらの話のロジック1つ1つにもれなくエンゲージしていました。
特に相手のロジックに直接エンゲージする反論はなかなかやろうと思ってもできないのではないかなと思いました。「AはBなのでCである」という話に対して「AはCでない、というのもD, E, Fだから」とカウンターアナリシスをぶつけることは簡単でも、それは別のシナリオを提供しただけであまり効果的に切れてないのかもしれません。「AはBでないからCにならない」や「AはBだったとしてもDだからCにはならない」と相手の話を踏まえた上でリンクを切る反論が評価されやすいなと感じました。
CGには帰結のクリアさで抜かれてしまいました。Premise(Characterization), Processはロジックを詰めれば話は増えますが、Outcomeは具体的な描写が中心になって来るからなかなか完成度が上がらないので直感的なインパクトを伝える為のイラストは意識的に時間をかけた方が良いのかもしれません。
スティグマの話はRelevancyが薄く評価を下げられてしまいました。広告が伝える情報量が少ないが故に、必然的に起こる過度な一般化やそれに伴う偏見の話をしたのですが、差別の要因はいくつもある中でなぜ広告がそこまで差別に寄与するのかが不明瞭だったそうです。
一口に「Relevancyがない」といっても「そもそもモーションからは全く生じない話」の場合もあれば、「複合的な要因から発生していて、問題全体と比較すればモーションが与える影響はほとんどない」という場合もあるのだと思いました。だから「論題から何かが少し良くなる・悪くなる(が、どの程度かは不明)」では不十分で「論題が何かに大きく寄与する」というくらい話す内容と論題をしっかりと結び付けないといけないのかもしれません。エクステンションにありがちな、論題との関係性がわかりにくい話は特に。
また、あれも言おうこれも言おうと内容を分散させず1つの話を完璧に仕上げた方が確実に勝てると思いました。二兎を追う者はなんとやらと言いますが、そもそも取られるか怪しいサードアーギュメントを立てようとするよりも基本的な話をミスなく立てることに時間をかけた方が本当に良いと思います。(特にオープニングの1st Speakerなら)
1年の時から先輩が口を酸っぱくして言っていた「すごいことを言おうとするな、1つの内容で勝とうと思え」という台詞が本当に身に沁みます。アイディアを発展させて初めて勝てるのだと思いました。
R3
OG: KEIO1 OO: SMU3 CG:SLS PUNE2 CO: Malaya2 (4位)
サウジアラビアが東南アジアのreligious autonomyを侵害してるという話や一部においてradicalizationが起きている話をメインにし(てしまい)ました。否定側に「Wahhabismやサウジアラビアの影響の良くない部分は認めるけどファトワーという手段は良くないよね」という方法比較のディベートに持ってかれ、すべてのアーギュメントがvalue neutralになってしまい4位を食らってしまいました。(CO・OO・CG・OG)ジャッジはシドニー大学のルシアン・タンという方(後日調べたところMalaysia Worlds ESL GF Judge・Otago Australs ESL GF Judge)でした。
難しいモーションのOGで慌ててしまい、相手のスタンスを予想し中心となる問いはなんなのか把握するといった、俯瞰して考える作業が不十分だったことが悔やまれます。OGであればあるほど、全体像を考えず思いついたアーギュメントに飛びつくことは致命的と頭ではわかっていたのに実行に移せなかったのが辛いです。
またユニークネス分析って実際足すのが難しいなと思いました。Wahhabismはもちろん東南アジアのイスラム教やファトワーに固有な話をした方が良いことはわかっていても知識が追いつかず分析を足せなかったのが本当に不甲斐なかったです。モーションを見てユニークネスを足すことだけを練習するのもありかもなと思いました。
あとファトワーに関する論題は去年のUADCでも出ていた上に、今年のABPと去年のUADCとは1人ACが被っていたのにも関わらず、対策出来なかった詰めの甘さは感じました。一応毎日Slate・The Guardian・The Atlanticあたりから一本は記事を読んでいたものの、Wahhabismのことは知りませんでしたし全アジア大会対策として的外れなことをしていたと思います。漫然とリサーチするのではなく最低でもモーションと関連したニュース記事、できればアジアにまつわるニュースを調べておくことが重要だったなと反省しました。
ちなみにWahhabismに関しては今年の春にサウジアラビア国王がインドネシアを訪問した際に(日本にも来ていましたよね)少し記事が書かれていたみたいです。
www.theatlantic.com/amp/article/518310
R4
OG:KEIO1 OO:NUS5 CG:Taylors3 CO:BUET3 (2位)
この試合が今大会で個人的に一番悔いの残る試合でした。ジャッジはIIUMのアムシャー・アジズ(Borneo ABP Semi Finalist)という方で順位はOO・OG・CG・COでした。OOはNUSといえど2人とも最近NUSに来たヨーロッパからの留学生で、このラウンドを見る限り、ちゃんとやれば勝てる相手だったにも関わらず負けてしまいました。
マイナーな分野(スポーツ・アート・カルチャーなど)におけるFirst Principleが欠如していると致命的になりました。自分たちの方から「スポーツはこうであるべき!」という価値判断を立てられなかったが故に、相手の「スポーツって結局はエンタメなんだし商業化してなんぼでしょ」という安直な話に勝てなかったのが悔やまれます。まともなプリンシプルを肯定側・否定側どちらからも建てられるように苦手分野を対策しておくべきでした。
ジャッジの方からはワーディング次第でプリンシプルに近づけられたのに、ずっとプラクティカルな話をしてたねと言われました。スポーツクラブを所有する企業が利益追求に走りファンや選手の意思が蔑ろにされているという話をしたのですが、これをコミュニティの権利が企業によって侵害されているという言い方にした方が評価しやすかったそうです。OGで当たり前のことをしっかり言おうとしすぎてワーディングまで陳腐なものにしないように気をつけた方が良いですね。
R5
OG:BUET2 OO:UNIMAS1 CG:KEIO1 CO:UST1 (1位)
ジャッジは九州カップでも何回か見てもらったボビー・アンディカでした。OOがAAの基準を提示していたので「この特定の状況においては男性もその基準を満たすよね」という話と「女性へのAAに対する批判を沈静化する」という話をして1位をとりました。(CG・OO・CO・OG)
Closingとしてきれいにディベートに入っていけたのが最大の勝因だと思います。それまでのディベートを理解した上で一番良い見せ方でエクステンションを出せてよかったです。(実際クロージングがどう言った形でそれまでのディベートに入るのかはかなり重要視されていて、ブレイクラウンドでも多くのクロージングチームは How do we enter this debate? と明示的に言っていました。)
R6
OG:UI4 OO:SMU4 CG:KEIO1 CO:SMU3 (1位)
ジャッジはジョシュア先生、さらにまさかの日本にまつわる論題。心理的に余裕を持って勝つことができました(CG・OG・CO・OO)。コンテクストをとにかく具体的に詰めて高齢化社会がいかに緊急な問題か示し、たとえ相手のベストケースとして出生数が増えたとしても時間が間に合わないという比較をメインに推しました。コンテクストを詰めること、その上で必要な知識の重要性を感じました。(ただあまりにも数字に依存した議論だったのでパーラーでは評価しづらい議論だったそうです、素直にトレードオフを示せというフィードバックを貰いました)
EFL SF
OG:KEIO1 OO:UI2 CG:UGM2 CO:SUFE2
OGでIRモーションだったので、R3のミスを繰り返さないよう対立軸を把握してから議論を完成させました。とはいえ個人的な出来は今大会で一番悪く、CGにきれいに抜かれてしまい本当に焦りました。(実際1位CG 2位 OGだったそうです)
知識量は正直大差なかったとは思うのですがEven if scenarioを2つ足されていたことや、同じ内容でももっとインパクトのある聞こえのよい言い回しで(Mutually Assured Destructionなど)言われていたことが主原因だったのかなとジャッジからのフィードバックをもらう限り感じました。
EFL GF
OG:KEIO1 OO:UI4 CG:UGM2 CO:BRAW1
EFL SFの反省を生かし、Even if caseおよび相手の目標が逆に達成される(いわゆるCounter intuitive argument)をとりあえず立ててCGをグラブすることはできたかなと思います。(実際2位はOOでOpening Halfだったそうです)
ただとにかくアーギュメントを立てることに集中したが故に、狭い議論しかできずSpirit of Motionに沿った議論をDPMになるまで出せなかったのが心残りでした。(右翼ポピュリズムに限った話ではなく、伝統的な政治運動との比較の中で新しいムーブメントは良いものなのか否かという議論が期待されていたそうです。)
おまけ3. 知っておくと良い豆知識
かなり話はそれますが、僕が国際大会に参加する前(特に1年生のうち)に知っておきたかったことをここに箇条書きしておきます。とはいえ僕もそこまで詳しく知らないので正確でない部分も往往にしてあると思いますが御容赦ください。アジアの大会に絞って書いたのでWUDC, Australsといった大会は違うかもしれません…。
・国際大会ってどう探すの・申し込むの?
大抵の大会はFacebookグループに告知されます。色々なFacebookグループがありますがAsia DebatingかJapan Debatersに入っておけば大きな問題はないと思います。グループではどんどん大会が告知されるので興味のある大会があれば申し込みましょう。
ただ告知されているものが「国際大会」なのか「海外の国内大会」なのかは必ず確認しましょう。(Japan Debatersで宣伝されているのなら大丈夫だとは思いますが…)
①大会に参加するには
・申し込みの細かな手順は?
申し込みには2段階あって、1st Phaseがいわゆる国内大会でいうインビテ・2nd Phaseがアプリケにざっくりですが対応していて、1stでスロット(参加枠)を予約してから2ndで確定させる感じです。1stでは大学名や参加チーム数を2ndではチーム名やフライトの時間を指定されたフォームに入力します。
1st Phaseが終わってから割とすぐに参加費を送金(送金後にキャンセルしたら大体の場合では返ってこない)し領収書(Proof of Payment)の画像をコミの指示に従って送ります。送金に少しでも遅れたら容赦無くドロップ(参加枠の取り消し)されるので気をつけたほうが良いです。(ちなみに郵便局から海外送金する際にはマイナンバーが必要になります)
ジャッジは2nd Phaseまでに探せば良いのですが、一度送金してから参加キャンセルすると払ったお金は帰ってこないので、送金する時までにジャッジを見つけて参加できることを確定しておいた方が良いです。何チームに対し何人ジャッジを提供すれば良いかは大会によって異なりN=N, N=1, N=N-1などいろいろです。(N=1は、N=Nと同じで、1チームに対し1人ジャッジ提供する提供義務なので気をつけてください)
・大会に宿ってついてくるの?空港からの移動は?
完全に大会によります。1st Phaseの段階でaccommodation/transportationがついてるかは明らかにされていますが、心配な場合は大会のコミの方へメッセンジャーで連絡を取ると良いです。だいたい1日以内で返信してくれます。
・大会の種類は?
僕もあまり詳しくないのでざっくりとですが、全アジア大会(UADCとABPの2つだけ)とそれ以外に分けられます。全アジア大会は知名度も規模もトップクラスで、他の大会とは一線を画します。全アジア大会以外の大会には、NEAOなど地域全体の大会やAteneo IVなど特定の大学主催の大会があります。
あとまあ当たり前ですが国内大会と同様にIV(大学対抗戦・Jointなし)やJointありの大会もあります。
・大会のレベルはどう違うの?
傾向として東南アジアや南アジアの大会の方が北東アジアの大会よりもレベルが高いです。トップ層が強いだけではなく平均層のレベルも高く、WUDC ESL Grand FinalistやABP Grand Finalistみたいな人がR3くらいでふらっと出て来てボコボコにされたりするので凄く勉強になると思います。
北東アジアの大会ではHKDOやTDOのように東南アジアからの参加者が多い大会はとてもレベルが高いと聞きます。
・プレトーナメントの存在
UADCやABPの前にはプレトーナメントと言って大会本番を意識した大会(受験でいう模試のような大会)があります。なかには実際にこれからUADC/ABPでACをする人がプレトーナメントでもACをしていたりするのでオススメです。モーションの雰囲気(知識ゴリゴリのモーションなのか古典っぽいものなのか)も分かりますし、ACと仲良くなると何かとお得です。
② 持ち物について
・GFのドレスコード
大会によってはGFを見にいく時にドレスコードがあったりするのですが、どれだけ守られるかは大会によってまちまちな気はします。MDOでは守っている人と守ってない人で半々といった感じだった一方で、ABPではほとんど全員がスーツなどフォーマルな格好をしていました。可能な限り硬めの服装は1着くらい持っていくと良いと思います。
・お金
送金に手数料が取られて参加費が数千円足りなかったり、前泊は現地会計だったり、何かと予期せぬ出費が現地ではあるので多めに換金していった方が良いと思いました。
・薬やマスク
行きの機内で意外と風邪引いたりするので万が一に備えて絶対に持っていった方が良いです。大会のパフォーマンスに響いたら悔やんでも悔やみきれません。
また寝ている時にエアコンで喉を傷めないためにもマスクを持っていくと良いと思います。
・カウンシル代
ABPのような全アジア大会ではCouncilが開かれて大会のルールに変更を加えたりします。各大学の代表は原則参加しないといけない上に、参加するにはお金を払わないといけません。払えないと居ても意味がないのでカウンシル代は持って行った方がいいです。ちなみに今年のABPでは一大学毎に約30USD必要でした(現地の貨幣とは異なるので気をつけてください)。
・本
大会によっては2,3時間の遅れが平気で起きて長時間待たされたりします。暇つぶしのためにも本を持っていくと良いと思います。
・モバイルWiFi
今年のABPは四つ星の良いホテルだったのですが、それでも各部屋へWiFiは届いていませんでした。スマホが使えないと集合時間など大会からの連絡すら受け取ることができないのでモバイルWiFiは持って行った方が良いと思います。僕は空港で借りられるモバイルWiFiを利用しました、1週間で8000円(チームで割り勘したので一人当たりは4000円)でした。
・フリースや防寒具
東南アジアは暑い印象があったのですが、冷房がガンガン効いているので室内では夏でも本当に寒かったです。冷え性の人は特に1・2枚は羽織るものを持って行った方が良いと思います。
・日本食
ホテルの食事が合わない人(MDOではそこそこいたように思います)は長期に渡る大会でノイローゼにならないためにもカップ麺やインスタント味噌汁など日本食を持っていくと良いらしいです。
・変圧機能付きの電源タップ
これ1つあればコンセントアダプタをたくさん持って行く必要はないですし、そもそもホテルにたくさんコンセントが設置されてない場合もあるので持って行くことをお勧めします。ちなみに僕はこんなのを空港で買いました。
http://www.kashimura.com/goods/kaigai/usbcharger/wm8.html
・シャンプー類・バスタオル1,2枚
ホテルによってはアメニティがしっかりしていない場合があるので、日本から持っていった方が確実だと思います。
また偶々だとは思うのですが初めてMDOに行ったときはバスタオルの交換は1日おきで結構辛かったので(2年目は毎日交換されてました)、万が一に備えて1,2枚ほどタオルを持って行くと良いと思います。
あとは紙コップ、サンダルを持っていくと何かとラクだったりしました。また生活用水用に大きな水のペットボトルを現地に着いたら確保しておくと良いと思います。
淳さんブログご執筆ありがとうございました!以下が、KDSの実績となります。
EFL Champion: Keio 1 (Hikari Tamura, Atushi Sumida)
GF Best Speaker: Hikari Tamura
EFL 5th Best Speaker: Hikari Tamura
次は、田村くんによるABP紀行文の予定です!次もぜひ読んでください〜!ノ