録音だけじゃないブレイクラウンド

今回は20期の嶋本に、春Tのブログを書いてもらいました!^^


「ディベートをやっていたと人に胸を張れる結果はオープンブレイクのみだ」とは、尊敬する先輩の言葉である。結果よりもディベートを楽しむ事自体を目的としている私ではあるが、チームを組み仲間と大会に出る以上はやはり何かしらの結果を残したいという想いは強く、そんな中で成し遂げた今回のオープンブレイクは非常に嬉しく達成感のある物であった。正直な所を申せば、今大会においてブログを執筆するべきはセミファイナリストかつ個人プライズを排出したKDS Aや多くのブレイクを誇るジャッジ陣ではないかと思う。そんな中でオクトファイナリストであるKDS Cの、それも最もスコアも冴えなく大きな貢献もしていない私がなぜ今このブログを執筆しているのか甚だ疑問ではある。とはいえ今大会中に思ったことや反省などをブログとして書き残すまたとない機会を与えられた以上は、後輩たちやこの大会に出なかった人々に少しでも有意義な情報を残そうと色々と書き連ねたいという所存である。(なお私はこの文章をディベートを始めたばかりの後輩たちを仮想読者として書いており、内容は至極当たり前の事や基礎的なことに終始しているため、強いディベーターの方々や先輩たち,長文が嫌いな方はこのような駄文などに時間を割くことなく他の方が執筆した記事に目を向けていただきい)


目次
① 大会前
② 大会中
③ 感想など


 

①大会前

大沢杯,紅葉杯,BP novice,冬Tと大会が連続していた秋から冬にかけての期間、私は一人でのプレパ錬や音源のジャッジを日々怠らないなどディベートにコミットした生活を送っていた。しかしその後の数か月で留学出願や期末試験など大きな用事が相次ぎ、ディベートに対する意欲や割ける時間が限られてしまった。さらに個人的な理由によるモチベーションの低下も相まって、春休み初頭の2月に出場したAsian Bridge及びディベートのススメにおいてはそれぞれ1勝のみ、1勝ブレイク落ちという結果に終わった。銀杏杯以来のブランク明けパートナーと組んだAsian Bridgeはさておき、一橋やICUの精強なチームメイトと共にブレイク落ちしたディベートのススメに関しては何も言い訳ができないものであった。
語学試験や本出願などの留学準備に追われディベートに打ち込めず大会に出ても結果が一切出ない暗い日々を打破するきっかけとなったのは、ジェミニ杯のチーミングであった。努力家かつ才能あふれる布施と組める事で、私のディベートに対するモチベーションが帰ってきてくれたようだった。先輩からの話ではジェミニ杯のチームで春Tに出場するケースが多いという。その流れで春Tも組む事となったが、そこに更に3度の学年チャンピオンである海人も名乗りを挙げてくれたため、このチームで出場する運びとなった。
その圧倒的な英語力に裏打ちされた火力型スピーチを武器とする海人がファーストスピーカーに適している事,マター量と俯瞰力において馬場に匹敵しうる実力者である布施はウィップに向いていることは自明だったため、私は自動的にセカンドスピーカーとなった。アジ橋,ディベススにおいて私はウィップスピーカーであったが、双方とも芳しい結果だったわけではなく感触もよくなかったためこの転職は甘んじて受け入れた。なおこの決定から本番までに一度もチームでのラウンド錬を行えておらず書くこともないため、代わりと言っては難だが私が個人的に行った練習について軽く書いておくことにする。
① 一人プレパ
秋以来怠りがちであったが、大きな大会を前にこれを再開した。今回は以前のように古典を一通り見るというよりは、過去のそれなりに難解なAsian大会のモーションを見て3つそれぞれの対立軸や証明責任を把握していく作業を行った。この過程でこれまでにラウンドやプレパ練,レクチャーなどで学んできた事を再確認する事ができたと思う。
② 音源
今回はロールがセカンドスピーカーであったが、私はこのロールの主な役割は「相手の最も強い話を立論・反論の両輪で全力で対応する事」及び「Leaderのスピーチを足りない点,多角的な視点をキーワードに伸ばす事」(ソース)」であると認識していた。前者の練習として、私は音源のPM及びLOスピーチを聞いてリバッタルを作るという作業を行った。何にリバッタルするか,どのようにリバッタルするか,その際にどれだけ細かく説得力のあるリバッタルを打てるか,といったことを意識して行った結果、大会本番に相手のスピーチを聞きながらリバッタルを作る作業を比較的スムーズに行うことができるようになったと思う。
③ スピ練
これは以前WADの久保くんに聞いた練習法であるが、流暢さ,火力(結局諦めたが),何よりストラクチャーの改善のために「アーギュメントごとのスピーチ練習」を行った。私の自宅近辺は夜間には人通りが減るため電車でプレパして最寄り駅からの徒歩中にスピーチをしていたが、このおかげで大会本番でも(いくつかのラウンドを除いて)以前よりは幾分かまともなスピーチができたと信じている。

②大会中

S__8495125

予選ラウンドが金沢八景で行われるので朝が早く、さらに大会前恒例の消灯後の不眠によって寝不足で当日を迎えた。しかし心強いチームメイトや保険としてのルーキーブレイクの存在もあり、紅葉などの様な物を食べられなくなる類の緊張は殆どなかった。会場の横浜市立大学だが、キャンパス内の池で亀が日向ぼっこをしているなど心安らぐキャンパスであった。大会から逃げ出してあの亀と共に優雅な一日を過ごしたい衝動に駆られたが、そうもいかないので静かにORに帰った。
下らない事をグダグダと書いていても仕方ないのでラウンドの話に移りたい。今回のチームでは基本的に布施がveto,プレパの主導権を握っていた。時間配分としてはおおよそ「①最初の5分でvetoする ②次の5分でスタンスを決める ③10分かけてアーギュメントをある程度作る ④最後の10分でファーストの海人はスピーチを作り、布施と私は相手の話を考える」といった物であったと記憶している。
⑴ R1 Gov win
TH, as feminists, opposes classic Disney Films(e.g. Snow white, Cinderella etc.).
TH, as feminists, opposes gaining profit through dating(e.g. パパ活, suger babies).
THW allow minorities to form exclusive companies that only hire minorities.

布施「2つ目BOP重くね」
海人「1と3はやりやすくね」
私「まあ132じゃね」
→1つ目へ
Classic filmsなので清純である事が良い女性の在り方である,王子様に愛されるのが女性の幸せであるといった価値観の押し付けなどかなと予測しラウンドへ向かう。海人に向けて「アナ雪もモアナもあるやんけ!」というPOIを頂いたため、その場での返答とセカンドの私からのリバッタルで「motionを読んでください」と丁重にお返しした。私のスピーチはなぜか78点を頂いてはいたが、ラウンド後に海人に「全部アサーションだった」と指摘された通りそれぞれの話を落としきれていなかった。大会後に別の機会に馬場に言われた「4つのアーギュメントを70%ずつ立てるよりも3つのアーギュメントを100%まで立てた方が良い」という言葉も踏まえ(これはファーストスピーカーに関する話ではあるが)今後気をつけていきたい点である。

⑵ R2 GOV win
THW abolish juvenile law.
THBT financial punishments should be proportionate to the wealth of offenders.
THBT criminal sentences should only be based on consequences of the crime, and not intent.
布施「俺これ(1つ目)やりたくない」
海人「(布施が言ってるんだし良いだろう)いいよ」
私「(布施と海人が言ってるんだし良いだろう)いいよ」
という何ともツッコミ所の多い経緯を経て3つ目のモーションをやることになった。CJSのプリンシプルを出しつつ害意のない事故を起こした加害者が如何に大きな責任を負うべき対象なのか,被害者の視点などを前面に押し出し勝つことができた。しかしRFDの後に「同じ方針で1つ目の方が数倍BOPが軽い」という言葉を頂き、チーム内の強いディベーターが言った事であっても自分の頭で考えた上でvetoを決めなければならないなどという凄まじく初歩的な事を再確認させられる次第となった。

⑶ R3 Opp lose
THBT museums should return arts to the countries of their origin.
TH opposes art criticism.
THW ban expression glorifying war heroes.
「上はBOPが重い」「真ん中はガバきついよね」ということで下のモーションをやることに。兵士一人一人に戦争責任はない、要らない戦争は却って減らせるなどを立てようとしたが京都Aには及ばなかった。このラウンドにおける個人的な反省点としては、DPMであるカズマイイダさんのスピーチに対する有効なリバッタルを即座に思いつくことが出来ず内容のないスピーチをベラベラと喋ってしまったことが挙げられる。強いディベーターと対峙した際にしっかりセカンドの役目を果たして行くために、ジェミニまで音源リバッタル練を継続していきたい。

⑷ R4 Gov win
今のところこれで2勝であるため勝てばオープンブレイク、負けるとおそらく(布施,海人のスコア的に固いと思っていた)ルーキーブレイクというバブルラウンドだった。この時の相手はHit-U Bで、日頃から親交のある相手ではあったため「俺らのために負けてくれ」などと戯言を交わし合う束の間の平穏を楽しむことができた。
TH opposes the narrative that it is shameful to cling to money.
TH supports cross ownership of stocks.
TH supports the growth of megacities as a development strategy.
布施「真ん中やりたくない」
私「(たしかにこれダメだけどマクロな話をスピーチするのきついからそんなに影響なさそうだけどでもまあ)良いんじゃね」
海人「良いんじゃね」
私「上プリンシプルだよね、下はいけね」
海人「132か」
布施「いいと思う」
といったR2の反省を生かした(?)vetoに落ち着き、下のモーションをやる事になった。経済モーションということで、それまであまりプレパに貢献できていなかった経済学部生の私は去年の必修で頭に叩き込んだ資本主義をここぞとばかりに吐き出した。スタンフォードでビジネスを学ぶ布施がそれに肉付けし綺麗にアーギュメントに作り、できたスピーチを海人がマシンガンの様に打ち込むという気持ちの良いディベートができたと思う。内容としては主に富が富を呼ぶ資本主義下において大都市が如何に有利であるかを押し出す物であったが、相手からの例をうまくフリップしていなす様に努力した。大会終了後にマークさんが仰る所によるとどうも適切なvetoではなかったらしいが、相手のケースである「大規模な都市を分割して地方都市として運営する」というものが立ちきって居なかったため無事に勝利を得ることができた。しかしマージンは1点であり、素直に喜んで良いかと言われると際どいものであったとも思う。
⑸ OF Gov lose
相手はICU “A”であり、厳しいラウンドが予想されたが「(負けをつけても噛みつかれなさそうだからという理由で負けをつけられないように)胸を張って自信に満ち溢れたスピーチをしよう」という合意のもとラウンドへ向かう。日頃から海人にネガティヴネガテイブと言われ続けている私は特にこれに欠けている自覚があったため、強く意識した。
THW not contact secluded communities in order to impart modern knowledge/technologies
TH prefers the world where political realignment happens frequently
THBT members of the parliament should resign when they change/quit the parties they represent during elections
全員「下がいい」
布施「真ん中ちょいきつい」
私「上ブータンだよね」
海人「231か」
という事で上のモーションに決定した。日頃から馬場がよく立てる「ブータン」を使いsecluded communityの人々にとって発展した社会に組み込まれる事が不幸である事を押すという方針はすぐに決まったが、それを支えるリーズニングやエグザンプルが足りずに何も証明できていないままラウンドを終えてしまった。ラウンド後にジャッジから「方針は間違って居なかったがそれを立てられて居なかった」というコメントを頂き、反省の残るブレイクラウンドとなってしまった。我々のチームはここで敗退し私は本業である大会の音源集めに戻る事になったが、その際に面倒を厭わずに協力して下さったリョウスケくんやICUの和田さんには感謝が尽きない。ありがとうございました。

③今大会を通して思ったこと

⑴ Vetoは大事
当たり前ではあるがAsianにおいてvetoは全てを決めるといっても過言ではなく非常に大切である。今回我々は本番前日のチームプレパ練でこの対策をある程度行ったため比較的スムーズにvetoを決めることができたと思う。私個人ではこれができず布施や海人の意見に便乗した局面もあったため、今後は一人でvetoを考える機会も増やしたいと思う。
⑵ 基礎的な事を落とさない
今回改めて実感したが、ディベートに勝つために必要なことは難解なアーギュメントを出すことではないと思う。大切なことは如何に基礎的な義務をそつなく確実にこなしていくかであり、今回のOFではそれができていなかったため結果発表の際に「このラウンドは微妙だった」と言われてしまった。特に今後続いていく1年生大会においてはモデルの欠如,コンテクスト不明,リーズニングメカニズム不足,インパクトが薄いなどといった基礎的な欠陥によって勝敗が決まってしまうケースが珍しくないため、これを読んでいる後輩たちには是非とも今回の我々の様なミスを犯すことなく勝ってほしいという所存である。
⑶ 個人練は大事
冒頭部分にも書いたが、今回私がつたないスピーチながらそこまで悪くないスピーカースコアを頂けたのは(もちろん優秀なチームメイトからのマターが大きな要因であるが)リバッタル練などの個人練が功を奏した結果であるとも考えている。最後の学年大会であり再び布施と組むジェミニ杯やその後のBPシーズンを見据え、自分なりに改良を加えながらこれを継続していきたいと思う。
今の時期の1年生,特に未経験者は週3回のラウンド練のみが練習の場であると思う(去年の春学期には週に1回参加していたかどうかですら怪しい私に偉そうな事をほざく権利は1㎜も無いが)。「ラウンド練すらまともにできていないのに個人練なんて」と思う人が大半であろうが、私は未経験者こそ個人練に勤しんでもらいたいと考える。というのも、マターもなく綺麗なスピーチをできるわけでもない我々未経験純ジャパにとってラウンド練で上達することは至難の業だからである。現状上手いわけでも強いわけでもない私が言っていることなので軽く聞き流して頂ければ幸いであるが、一刻も早く経験者に追いつきたい、帰国子女や留学経験者の様な綺麗なスピーチをしたいという人々は是非とも個人でのプレパ練やスピ練というものを一つの選択肢として持っていただければ幸いである

最後に
今回私がオープンブレイクにこぎつけたのはひとえに布施と海人のおかけである。頼りないチームメイトで大変申し訳なかったが、今後も一緒に切磋琢磨して行きたいと思っているので是非ともよろしくお願い致したい。今まで支えてくださった同期や先輩方、他大の友人たちなどへの感謝とともにこのブログを締めくくりたい。皆さま本当にありがとうございました。
春T2018_180522_0006


Result of JPDU spring tournament

Team awards (チーム賞)
Semi finalist (ベスト4); KDS A (Atsushi Sumida, Hikari Tamura, Takua Baba)
Oct finalist (ベスト16); KDS C (Kaito Suzuki, Yusuke Fuse, Hiroki Shimamoto)

Speaker awards (個人賞)
4th: Hikari Tamura
7th: Sumida Atsushi
Rookie 2nd: Takua Baba

Adjudication awards (審査員賞)
2nd :Mitsushi Ono

Under graduate adjudication awards
1st :Momoka Shibata
3rd :Shunsuke Kanda
4th:Kiyonobu Tamai

Breaking Adjudicator; Junji Yamamoto