Malaysia ABP 2023

今回の担当は、アジア最大級の国際大会ABPで見事EFL grand finalistに輝いた、深見太一さんと久保田奈々子さんです。大会当日の様子や、具体的な練習方法を振り返っていただきました。国際大会について知れる貴重な内容となっています。ぜひご一読ください。


Table Of Contents

  • ABPとは

  • 大会当日 by ななこ

  • 大会に向けた練習について by たいち

  • 大会を終えて

 


 

ABP(Asian British Parliamentary)とは

メジャーと呼ばれる主要な国際大会の一つで、アジアのインステが参加できるBP大会です。「アジアでのBPチャンピオンを決める」という位置づけです。予選6試合を経た後に、オープンカテゴリーとEFLカテゴリーでそれぞれ本戦が行われます。今年は9月の下旬にマレーシアのクアラルンプールのテーラー大学にて対面で開催されました。

以下、大会当日の様子、大会に向けての練習、感想の順で書かせていただきます。

 

大会当日 by ななこ

出発前

たいちさんと空港で合流することにして、2~3時間前に着いておこうってなりました。空港に着いて、運行状況を確認していると、出発が2時間遅延している、、、出発が深夜1時、、、「プレパ練でもしますか?笑」ってことで、軽くプレパ練をして、腹ごしらえもして、たいちさんは三田祭のブース分けzoom会議もして、ABPに羽田から向かうWADのひかりさん、あやかさん、UTのえみさん、よしぱんと合流しました。

マレーシア到着

飛行機ではわたしだけが爆睡をして、みんなちょっと疲れてそうでした。わたしとたいちさんは「観光できたらしたいですね」ぐらいのテンションだったですが、日本勢のみなさんがちゃんと行きたいところを練ってくださっていた&手際が半端なくよくていらっしゃったので、初日から観光尽くしでした。最初の観光地に向かう前に、よしぱんが「Davidお昼に呼んでもいい?」って聞いてて、たいちさんにDavidってどこの誰なんだって聞いたら、なんとDavid Africaで(まだここでも当時のわたしはこの状況のすごさをわかっていなかった)、一緒にチキンライスを食べました、、😳 めっちゃ気軽に話しかけてたけど、今ならわかります、あの状況のやばさが。

 

大会1日目

ホテルからバスで移動して、ORに到着しました。たいちさんと、緊張してるけど心地いい緊張だよねっていうことで、comfotable nervousという造語もできたところで、R1が始まりました。

R1(OG)3rd

THW significantly relax graduation requirements for schools in underprivileged areas (e.g. separate standardised testing, relaxed attendance requirements, flexible submission deadlines, reduced number of subjects, etc.)

とんでもなく怖いモーションが出てくることを覚悟していたので、古典っぽくてちょっとだけホッとしました。

R2(CO)2nd

THW would accept the contract to play in the Saudi Pro League.

CGの話にうまくエンゲージできなかったのが悔しかったのですが、太一さんがプレパで共有してくれた勝ち筋に持っていけたと思うのでちょっと嬉しかったです。あとここで、マカオの人たちがOGとCGにいたので、仲良くなれるきっかけになりました。

R3(CG)4th

THBT countries with public healthcare systems should not subsidize life-extending treatments for the elderly or those with terminal illnesses.

OGがしっかり強くて、COもwhipで返し方がすごく上手かったです。ちゃんと勝ち筋が分かってないから、パネルの人からのフィードバックでも”be more assertive”と言われて、ほんとにその通りだと思いました。オポに勝てそうな話を太一さんが帰りのバスで共有してくれました。いつか似た話がきたらドヤ顔で話したいと思ってます。

大会2日目

R4(OO)2nd

THBT developing countries should nationalise all mining and resource extraction industries

R3で「はっきり話せ」と言われたので、はっきり話すように心がけました。ジャッジのノートに取られやすいように意識しました。

R5(OO)3rd

THW lift economic sanctions on the Taliban

難しかったです。わたしの理解が浅くて、上手く伝えられたか心配でした。

R6(CG)2nd

THBT the feminist movement should oppose policies that incentivise people to get married.

ワーディングに注目するのもやっぱり大事なんだなって学んだ試合でした。そこからたいちさんが出したアナリシスがOGと差別化できてたんだと思います。

ブレイクナイト

R6のCOが強くて、終わった時点で、「もしかしたらブレイク厳しいかもしれない」と話していました。ちょっとだけお通夜みたいな雰囲気でした笑  バスでブレイクナイトの会場まで移動して、BAまでごはんとお酒を嗜んでいました。そのあと会場の前の方でマカオの人達と話していたら、いつの間にかBAが始まって、どんどん人がわたしの周りを囲んできたので、「日本勢のテーブルと壁ができちゃった、、」と思いつつも、そこでBAを見ることにしました。ジャッジブレイクのあとに、EFLカテゴリーの発表があり、 5thでKDS 1の名前が、、!(本来Keio 1なのに無知のわたしがレジのフォームを打ったせいでKDS 1)びっくりしすぎて、周りの人に”That’s  me!! That’s me!!”って言いふらした上に、人ごみをひどいくらい思いっきり掻き分けて、たいちさんたちがいるテーブルに行きました。あの感動は今でも手に取るように思い出せて忘れられないです。

大会3日目

この日は中日でした。安心&嬉しい&疲れちゃったで、朝から泰丞と梅子のプレパ練をたいちさんに見てもらうのを約束していたのに、初めてたいちさんとの練習で絶起しました。急いで2人に謝罪LINEをしたら、たいちさんからは「生存しててよかった()」って来て、まさかの方向だった&より申し訳なくなりました🙇‍♂️笑 プレパ練後、日本勢で中国系のお店に行って、遅めのお昼を食べたあと、ツインタワーも見に行きました!!夜のライトアップがほんとにすごく綺麗でした。

大会4日目

バスで移動後、ORで待機していました。この日もcomfortable nervousな気持ちでした。

Pre GF→advanced(CO)

THBT the EU should cut funding* to EU member states that violate Article 2 of the EU Treaty *eg: Agriculture subsidies.

知識が皆無で渡してもらった内容を理解するので精一杯でした。Utility vs Democracyはよくあると思うので、ストックしとこうと思いました。advancedできて、さすがすぎるって思っていました。

GF→eliminated(CO)

THP a world with access to a pill that permanently removes your ability to feel strong or intense emotions

たいちさんのメンバーの話が可能性のある話だったのに私のwhipで伸ばしきれなかったです。ちゃんとwhipとしてエンゲージして、勝ち筋を見せることができなかったのが本当に悔しかったです。終わった後にたいちさんが励ましてくれて、この悔しさは絶対忘れずにいつか克服すると心に誓いました。

Closing Ceremony

圧巻のOpen GFでした。全員が洗脳してくる勢いで話すので、「この人たち大統領になったら扇動力すごそう」って思いました。傷心中には眩しすぎるくらい圧倒的なスピーチでした。ショーもディナーも、ドレスコード持ってくればよかったってこと以外は本当に全部素敵でした。仲良くなれた人もいて(それはわたしが終始のほほんとしていたからなだけです)、これからもどこかの大会で会えたら嬉しいなって思いました。

 

大会に向けた練習について by たいち

特にやってよかったなと思った練習方法について書きました。旅行前の持ち物とかの反省を後ろに書いたので、大会直前の人がいたら後ろの方を読んでください!

 

  • チーム
    • オンラインの海外大会に出る
      • ABPに向けては二つの海外大会(Sunway Debate Open, Intertext Pre ABP)に出ました。
      • よかったところ
        • 実践練習を集中的に積める
        • 色々な分野からバランスよくモーションが出るため、苦手な分野がわかる
        • 熟練したジャッジに見てもらえることが多く、質の高いフィードバックをもらうことが出来る
    • 海外のdiscordサーバーで試合する
      • 海外ディベーターが集まって練習しているdiscordサーバーがあります。フィリピンやヨーロッパのサーバーにお邪魔して練習試合をさせてもらっていました。このサーバーの存在は海外大会に出る何回も出る中でたまたま知りました。見ず知らずの僕たちにも親切にしてくれて感謝しかありません。
      • よかったところ
        • 海外のディベーターの話し方やジャッジの見方に慣れることが出来る
        • 特にNA SparというサーバーではヨーロッパやアメリカのEPLスピーカーのスピーチに慣れることが出来る
          • 7分のスピーチで出てくるマターの量やフレーミングの丁寧さにおいて段違いな人がいます。
          • 全く歯が立たなくて落ち込むこともあるけど、その分自分の至らないところをはっきりと認識することが出来ます。
        • 親切なジャッジがいる
          • いただいたフィードバックはABPでも今でもすごく役に立っているなと思います。
            • 極端な言い方を避けてExtent を比較すること、Mechanismに対しproportionateなImpactを付けること、相手のニュアンス・世界観を十分に踏まえてengageすること
        • 有志の練習会なのでジャッジがいないこともディベーターが足りないこともあります。
    • PMを聞いてLOスピーチをする練習
      • この練習は主にオープニング対策とやっていました。流れは以下の感じです。
      • 流れ
        • 想定:LOななこ DLO:自分
        • ①YouTubeの適当な試合を見つけてくる。(WSDCはわかりやすいものが多くおすすめです。)
        • ②その試合のモーションでOOとしてプレパする。
        • ③YouTubeの試合のPMを聞く。
        • ④LOがスピーチをする。(PMへの反論+OOとしての立論)
        • ⑤チーム内でプレパやスピーチについてお互いにフィードバックする。
      • よかったところ
        • 短時間(約30分)で出来る
        • オープニングのプレパ、海外のディベーターのスピーチのリスニング、エンゲージ、立論をまとめて練習できる
        • 個人的にはこの練習で、プレパでの意思疎通のやり方やセカンドでのプレパの感覚を掴むことが出来ました。
  • 個人
    • 試合が終わった後に、一人でもう一度スピーチ
      • 言葉足らずだったところを繰り返し練習することで、他の試合でも使える言い回しが増えます。
    • レクチャーを聞く
      • Debate For Japanのレクチャーで(やっと)Characterizationの重要性を理解しました。本当に行ってよかったです。
      • YouTubeにも色々なレクチャーがあります。
    • Pre ABPでブレイク落ちした後に本選を見に行く
      • よかったところ
        • ディベートの技術を学べる
          • どうやってVertical Extensionをするのか、どう分析を詰めるのか、など
        • 単純にモーションの分析のストックが増える
          • 似たモーションが出ることは往々にしてあり、一つのテーマにおいて汎用的に使える分析は結構あります。
          • 強いディベーターの分析の切り口や使っていた事例をメモしてストックすることで、効率よくマターを蓄積できます。
          • 実際に本選で聞いた分析やフレーミングは、他の試合でそのまま活きました
            • 例:ある大会のSFのCOが話していた企業に関する分析→別の大会のOOでそのまま話せる
    • オンラインの海外大会にジャッジで参加
      • Odesa Open, Makiling Debate Openにジャッジで参加しました
        • オンラインの海外大会の参加方法やジャッジについてはこの記事が詳しいです。
          • https://sites.google.com/view/average-resoonable/%E3%81%9D%E3%81%AE%E4%BB%96/%E6%B5%B7%E5%A4%96%E5%A4%A7%E4%BC%9A%E3%81%AE%E3%81%99%E3%82%9D%E3%82%81
      • よかったところ
        • 熟練したジャッジの視点を学べる
          • 未熟な状態で海外ジャッジに行くと、(ACに頼りないと判断されるため)強強のジャッジと一緒にアロケされます。経験豊富なジャッジから議論の評価の仕方やOAでの順位の正当化の方法を学べます。
        • ディベーターのスピーチを客観的に見ることが出来る
          • 色々な点数帯の試合を見ると、強いディベーターの共通点が見えてくるかもしれません。
        • リスニングの練習になる
          • リスニングのキャパシティーはディベートをする上で最も大事な力の一つだと思います。
            • 相手のケースの要点やヌケモレを把握する力
            • 相手の話に聞きながら、その話の試合全体での意義を考える力
          • ジャッジをすれば必然的に聞く訓練がたくさんできます。
    • わからない論題についてリサーチ
      • 個人的にはリサーチには2つの目的があると思い、リサーチの方法も目的に合わせて変えていました
        • ①馴染みがないテーマについて、直感的な理解を持つ
          • 例:途上国のフェミニズムについて見当もつかない→まず途上国の女性についてフィールドワークしている人の本を読む、それっぽいドキュメンタリーを見る
          • 便利な方法
            • とりあえずYouTubeでドキュメンタリーを見る
            • わかりやすい本を読む
            • 有識者の話を聞きに行く(授業とかセミナーとか)
        • ②ある程度直感的には何が起こっているかわかっているテーマについて、詳細な知識を得る
          • 例:マイクロファイナンスについて主要な話は知っているけど、近年の変化についてもっと詳しく知りたい
          • ネットで検索するときの工夫
            • 情報自体は莫大にあることが多いので、ある程度狙いを定めつつ調べるのが効率良いと思います
            • ざっくり説明しているサイトを見る→重要そうな人名や事件の名前、関係の深い国の名前を見つける→そのキーワードについて集中的に調べてみる
          • ディベートのトップラウンドから学ぶ
            • YouTubeに上がっている試合を見て、そのスピーチに出てきたキーワードや具体例をメモして、それについて調べるのも効率がいいです。

大会前後で思ったこと

  • クリップボード

対面大会では基本的にモーションが出てから試合会場までそこそこ歩くことになります。歩きながらメモをかけるようにクリップボードがあると便利です。

  • フォーマルな服装

GFの時は、GFに出る人だけじゃなくてオーディエンスもみんなスーツを着ていました。大会のドレスコードをよく確認して、必要ならばスーツを持っていきましょう。

  • マスクとブランケット

飛行機の機内は寒くて乾燥しています。

  • 飛行機は早くとるに越したことはない

基本的に直前になる程、高くなります。(たまに便が追加されて局所的に値段が安くなることもあります。)

  • 両替は現地で

日本の為替レートは高めです。両替は現地で済ませた方がお得です。

  • ディベート難しい

予選のR5で3位を取った時は純粋な敗北感を感じました。EFLブレイクを確実にするためには、ここで1位か2位をとっておきたいという点数帯でした。論題は制裁の是非に関するもので、4年間即興ディベートをしてきた自分は過去に何度も似た論題をやってきたはずでした。それなのに納得の行く方針や分析を思いつくことが出来ずやるせない思いで一杯でした。

R6は今まで淡くあったブレイクの期待がほとんど消えた状態で臨みました。無心で悔いのないプレパとスピーチをすることだけに集中して、試合では淡々とオープニングを聞いて無難な立論を立てました。プレパやスピーチの合間でお互いの認識をすり合わせ、チームとしていい感じのスピーチが出来た気がします。結果として一番苦手だったCGでオープニングを抜くことが出来て、運も味方してギリギリブレイク出来ました。

この大会や大会に向けた練習を通して、ディベートの面でもディベート以外の面でもすごい人はたくさんいるんだなと改めて思いました。周りの人たちと切磋琢磨しつつも、同時に自分自身の中での進捗を大切にしたいです。

 

大会を終えて

大会を終えて(ななこ)

この大会でほんとにディベート人生が変わったと思います。それぐらいたくさんの人に支えてもらってメジャー大会のGFまで行かせてもらえて、そこで自分の課題にも向き合うことになりました。わたしの成長のためにたいちさんを大きく巻き込んでいることが、最後までほんとに申し訳なかったのですが、ただ、それと同じくらいにすごく感謝しています。たいちさんの人間性と天才さに毎回救われていました。わたしもそういう風に人を支えられる人間かつディベーターになるまで、日々謙虚に精進します!

大会を終えて(たいち)

初の海外の対面大会ですべてが新鮮でした。オンラインで憧れていたディベーターやジャッジと対面で話せた時は、嬉しさを通り越して不思議な気持ちでした。チームメイトのななこは、いつのまにか色々なインステの人と仲良くなり、閉会式や帰りの時には何年来の友人?みたいな感じになっていて、格の違いを感じました。またディベートへのコンスタントな努力やバイタリティの高さも、先輩ながら見習っていました。

スケジュールを詰めて練習に時間を割いてくれたななこを始め、練習や大会を支えてくださったジャッジやディベーター、運営等の方々のお陰で、この大会を全力で楽しむことが出来ました。目の前のことを頑張りつつも、少しずつお世話になった人たちに間接的にでも恩返ししていきたいです。


Malaysia ABP 2023

EFL Grand Finalist
KDS 1 (Taichi Fukami, Nanako Kubota)