土筆を越えたその先に…Tokyo NEAO 2016

こんにちは!2年の藤井です。私がブログを掲載するのはこれが最後で、次の投稿からは新任に引き継ぎます(またあらためてSNSでご挨拶しますね~) 。さて、今年はNorth East Asian Openが東京にやってきた!ということで大盛り上がりでしたね(なお東海大学での開催のため “Kanagawa NEAO” ではないのか!?との声多数。「東京ディ〇ニーラ〇ド」的なアレではないでしょうか)。素晴らしいディベーターが多く出場する中、なんと一年生ペアでOpen Breakを果たしたKeio 3のうちの一人、キヨが感想を書いてくれました!


こんにちは。19期の玉井静允です。今回はヒロとチームを組んでKeio3として参加したNorth East Asian Openの感想を書かせていただくことになりました。とにかく学びが多い大会だったので長文になってしまいましたが、どうか最後までお付き合いください。

目次

1.準備
2.大会
3.感想
4.謝辞

1. 準備

思い返せばディベートを始めてまだ間もない7月頃にあつしさんからのアツい勧誘に促されなんとなく出ることに決めた覚えがあります。大学に入るまでずっと海外にいたヒロはどう考えてもOpen枠での出場で、誰にも組んでもらえていませんでした(笑)。締め切りの二時間前ぐらいにLINEで誘われ、アメリカに6年間住んでいた自分もおそらくOpen枠だろうと思い、合理的なharm minimizationの考えから組むことにしました。

早くから組んだものの、梅子杯やBP Noviceとの兼ね合いで練習を始めるのは本番の二週間前になってしまいました。ちょうど被った三田祭休講期間は駒場練に行ったり、同期でラウンドを開いたりして有効活用しました。プレパ練も試してみましたが、話が逸れすぎて全く練習にならなかったのでそれっきり一度もやっていません(笑)。ラウンド練以外はお互いやるべきことを各々こなすという個人主義を貫きました。

土筆杯

“Pre NEAO”という位置づけで出ることにしたこの大会は、NEAOに向けてチームのコンディションを整える上で大きな意味合いを持つことになりました。規模の小さい大会ということもありORの雰囲気はいつもよりゆる~い感じがしましたが、構わず初戦からリアルガチで挑ませていただきました。あくまでもNEAOの記事ということで詳細は割愛させていただきますが(そんな書くことない)、結果としてはBest Team、Best Speakerの二冠を果たすことができ、最高の出だしを切ることができました。

そんなこんなで大会までにチームとしてはある程度形になりました。IRのモーションなど不安要素を多々残しつつも、充実した直前期を過ごせたことで自信を持って本番に挑むことができました(合格体験記みたい)。

慶應のロゴってかっこいいよね

慶應のロゴってかっこいいよね

NAの圧倒的覇者、ゆうとと肩を並べる日が来るとは…

NAの圧倒的覇者、ゆうとと肩を並べる日が来るとは…

 KDS全員がBest Speaker入りを果たした土筆杯

KDS全員がBest Speaker入りを果たした土筆杯

2. 大会

ここではラウンドごとに感じたことを英語で一言にまとめてから振り返りたいと思います。

Prelim Rounds

Round 1 (CO) 2位
THBT feminists should try to co-opt, rather than challenge traditionally patriarchal media (e.g. men’s magazines, fairytales)

“BE STRATEGIC”

初っ端から苦手意識の強いfeminist 系モーションが出た上に、OOにマターグラブされるというピンチに追い込まれました。苦し紛れにExtensionを出したものの、OOを上回ることは厳しいと思いGov Benchをひたすらディスる戦法に軌道修正しました。OOとの差別化より相手へのengageに重きを置いたことが功を奏しなんとか二位に滑り込めました。BPは一位になれなくても二位になれれば「勝ち」なので(グラファイは除く)、臨機応変に戦い方を変える重要性が感じられました。戦略勝ちを狙えるのはBPスタイルの醍醐味だと思います。なお、このラウンドのチェアは後に今大会のbest adjudicatorとなるかの有名なHyewon Rhoであり、リフレクの音源は重宝させていただいています。

 

Round 2 (CG) 2位
THBT the Democratic Party of the United States should shift the focus of their message from culture and identity politics to economics and inequality

“DON’T LET YOUR GUARD DOWN”

「 民主党が当選するためにはどちらが有効策か」というフレーミングをもとに、「ヒラリーがトランプに負けた」具体例を最大限に活用しつつ、普遍的な理由を立論しました。Oppから「今回の大統領選で全てを決めつけるのはセコくね」と何度もクレームが来ましたが、向こう側から有効な具体例もなかったので上手くジャッジを説得することができました。Decisionを待っている時間に「一位キタコレw」と話していたのですが、感触とは裏腹に二位でした。RFDを聞いてみると、DPMの分析がすごく評価されておりCGからはそれを上回るものはなかったとのこと。PMのスピーチを聞いた時点で見切りをつけ、DPMの内容をろくに聞かずカッコいいイントロばかり考えていたことによる痛恨のミス…。ヒロと戒めあいながら次のラウンドに備えました。

 

Round 3 (OG) 1位
TH regrets campaigns by animal rights organizations that portray the suffering of animals as similar to that of humans

“TAKE A FIRM STANCE”

今大会で最も印象に残っているラウンド。主体がTHとなっていることから「動物が人間と同等に苦しむ描写は動物を人間と同程度に保護されるべきものとするので、人間の功利のために不可欠な動物の活用までをも批判し、人間のために存在する政府としては嘆かわしい」というスタンスをとりました。今考えればTHだからといって主体を政府に限定する意味がわかりません。案の定OOは我々のスタンスを拒絶し、「動物愛護団体として効果的な手段かどうか」という視点で議論を繰り広げました。LOのスピーチを聞いた時点で「俺らスタンスしくったんじゃね」という発想が脳裏に浮かびましたが、「ここで引いたら間違いなく四位でブレイクは厳しい」と思い、ヒロにも同じスタンスを押し切ってもらいました。ClosingのチームもOGのフレーミングに乗っかることはなかったので、まるで自分たちだけがモーションを理解しているかのように「This motion is not “TH as animal rights organizations regrets…”」とPOIで主張してBox outされないように必死でした(完全にブラフ)。前代未聞のパラレルディベートとなった訳ですが、長いディスカッションの末、ジャッジにOGの浮きまくったフレーミングをとっていただき一位をもらえました(最後まで諦めなくてよかった~)。

 

Round 4 (OO) 3位
TH regrets the narrative that one has to be sociable to be successful

“BUILD UPON THE PREMISE”

例えば「THW legalize prostitution」のGovにおいて、「売春から得られるお金による機会の拡大」などのbenefitをいくら話しても、現状で売春が「他に働くあてがない貧しい女性のための職業」として存在している前提を立てなければ強い分析にはなりません。このラウンドでは、そもそも「社交性とはなにか」、「成功とはなにか」という前提をほとんど分析せずにその結果生じるであろうbenefitばかりに時間を割いてしまったせいで、自分たちに有利な前提をしっかり立ててきたGov Benchに負けてしまいました。

 

Round 5 (OO) 2位
THW ban fractional reserve banking (i.e. require all banks to be under a full reserve banking system)

“MATTER MATTERS MOST”

経済学部に所属しておきながら銀行についての知識がほぼ皆無な自分に嫌気がさしました。プレパ時間の半分以上を銀行の仕組みを確認することに使う羽目になり、見返してみると文字よりも図と数字が目立ちます(笑)。「銀行がお金を貸したいときに貸せなかったら企業がビジネスチャンスを逃して経済が滞る」という子供じみたargumentしか立てられないまま15分が過ぎてしまいました。爆死覚悟でラウンドに挑んだところ、PMがモーションの意味を逆に解釈したことでLOのスピーチをするという異常事態が発生する(突破口)。お陰様で二位をとらせていただきました(一位のCGはinflation illusionやらeconomic bubbleやらでもはや別次元)。「知識がないと話すこともない」というごく当たり前なことを痛感させられ、たいしてリサーチもせず大会に出まくっている今の自分にはぴったりの警告でした。モーションの読み間違えには気をつけましょう(笑)。

 

Round 6 (CO) 2位
THW hold the board of directors of corporations criminally liable for high incidences of suicide among their workers

“THE HARD LINE IS THE ONLY LINE”

二位以上をとらなければブレイク落ちという正念場。モーションは…な、なんとBP Novice予選のround 2とほぼ一緒ではないか!!!さっきのラウンドに引き続き天が味方してくれているとしか思えない流れ。記憶を掘り起こしながらプレパし、「秘密裏に中間管理職が昇格を目論んで部下を酷使しおり、取締役は構造的に防ぐことができない」というargumentを立てました。ただモデルで「取り調べをしたあとに取締役にも責任があると判断したら処罰する」と述べてしまい、「それなら初めからcriminally liableにした方がいいし、結局誰に責任があるといいたいのかわからなかった」と後からリフレクで言われてしました。ソフトスタンスをとったが故に生じた混乱ですね。Always take the hard stance!(これが言いたかっただけ)

 

Break Night

予選ラウンドをやり終えた達成感に浸りながら正装に着替えるために一旦バスに乗りホテルへ戻りました。着替えてみるとヒロとたまたまネクタイがお揃いでテンションUP!!ノリノリでヘアスタイルをセットし、いざブレイクナイトへ(笑)。

会場は海老名のオークラフロンティアホテル。国際大会はやはりスケールが違いますね…。緊張を紛らわすためにドリンクを飲みながらADIや大会中に知り合った人などと写真を撮っていました。そうこうしているうちに待ちに待ったブレイクアナウンスメントがやってきました。先にBreaking Adjudicatorsの発表で名前を呼ばれ歓喜する田村に勢いづけられたか、12th Open Breaking TeamとしてKeio3は呼ばれました。

バブルラウンドで二位以上をとれた感覚はなかったので不思議な気分でしたが、とにかく雰囲気に身を任せて喜びました。SNSを通じても同期や先輩方からお祝いの言葉をいただけてとても嬉しかったです。ホテルに帰ってから明日に備えてすぐに寝るつもりが部屋で話が盛り上がってしまい、結局眠りについたのは一時頃でした。

Keio 3

Keio 3

ADI勢全員集合!

ADI勢全員集合!

With Leomar & Nicole♡

With Leomar & Nicole♡

ピアノの発表会前に記念写真を撮る娘と父

ピアノの発表会前に記念写真を撮る娘と父

Break Rounds

Quarter finals (OG)
THBT charismatic leaders, regardless of their political platform, does more harm than good to democracy

“STUDY ENGLISH”

「セミファイまで行ってやる!」と意気込んで臨みましたが現実はそう甘くありませんでした。それもそのはず、偶然に偶然が重なってブレイクした我々と違い、他の三チームは正真正銘予選を制してきた猛者たちでした。マターで質的にも量的にも圧倒された訳ですが、もう一つ思ったのが英語力です。自分がこのラウンドの中で一番英語が下手くそだったのは顕著でした。今まで「帰国子女」というステータスからなんとなく英語は大丈夫だろうと思い込み、努力を怠ってきた気がします。そんなメンタリティーで英語ディベートを半年以上も続けてきた自分が悔やまれますが、この大会で心機一転できました。マナーがとにかく素晴らしい海外ディベーターたちと対戦するとマターファイルならぬマナーファイルを作る必要性すら感じました(笑)。こうして二人のNEAOは幕を閉じました。

 

みんなお疲れ様!

みんなお疲れ様!

韓国でラッパーとしても活躍する憧れのDominic Jaeho氏

韓国でラッパーとしても活躍する憧れのDominic Jaeho氏

翌日は台湾ディベーターズと渋谷で合流!

翌日は台湾ディベーターズと渋谷で合流!

大好評だったお好み焼き

チャンピオン眩しすぎるぜ

3. 感想

パートナーとの仲は良好に

これは夏のADIでレクチャラーのSironから教わったことです。彼曰く「プレパで一心同体になれるほどお互いを理解していないと大会で良い結果は望めない」だそうです。そこまでいかなくとも、チームの関係が上手くいけば大会も上手くいくのは事実だと思います。実際ヒロとは金曜の練習後に毎週カラオケオールをするような仲でしたし、組んでいて何より楽しかったです。チームの仲は大会中の精神状況や大会までの準備期間にも影響を及ぼします。ラウンドで負けても素直にお互いの反省点を言い合えて、暇があれば一緒に練習しようと思えたパートナーと組めたのはとても光栄でした。

思い返すと今まで出た大会で組んだパートナーは素晴らしい人たちばかりでした。エリザベス杯で組んでいただいたななみさんを始め、たかお、Yenpo、塩田、まりえ、みおこ、柳ももか、あつしさん、そしてヒロ。一つ一つの大会にはそれぞれの思い出があり、今ディベートを続けている自分を形作っています。だからこそ周りへの感謝の気持ちを忘れずにこれからも取り組んでいきたいです。

結果に一喜一憂しない

ラウンドの振り返りでも書きましたが、今回の結果は運によるものが大きく自分の実力には見合っていません。とくにBP大会ではポジション、ラウンドのレベル、ジャッジの取り方などによって勝敗が大きく左右されるので実力を測る指標としてはあまりにも不安定です。梅子杯、BP Noviceとセミファイまで進むことができましたが、いずれもBest Speaker入りはなりませんでした。NEAOも蓋を開けてみるとspeaker pointは辛うじて75を越えていたぐらいでした。勝ち負けは対戦相手との相対的な強さと時の運でほとんど決まってしまうので、予選でのspeaker pointの方によっぽど目を向けるべきです(speaker pointも相対的な指標ではありますが)。チームとして結果が出たことに喜んで、個人として実力が伸び悩んでいる現実から逃げていた部分は否めません。上手くなったという錯覚に陥った瞬間、成長は止まるものです。大会ごとの結果に振り回されず自身を客観視できるディベーターにならなければならない、と強く感じました。

4. 謝辞

今回は多くの方々にお世話になりました。いつも一緒に練習してくれた同期、先輩方、前日の夜に連絡しても快く練習に混ぜてくださったUTDSのみなさんありがとうございました。また、大会の運営に携わられた方々も本当にありがとうございました。

Special thanks toあつしさん。BP Noviceで組むことが決まった紅葉杯明けから、古典モーションすらまともにプレパできなかった自分を見捨てずに一から指導してくださりました。お忙しい中時間を合わせていただき、何度もマターダンプやレクチャーをしてくださりました。Oppressive Regimeとか言ってふざけていましたが、本気で思ったことは一度もありません(笑)。感謝してもしきれないです。

Also to田村。毎週のように火曜日は終電まであつしさんと二人係でエジュケしてくれてありがとう。謎のミスド練がまさか後になってこんなに活きてくるとはね。NEAOのジャッジプールの中で当たり前のようにブレイクしちゃうところほんとさすがっす。これからもよろしく。

Last but not least to Hiro. Teaming up with you was an absolute honor and was by far the most exciting experience since  I started debating. You make debating for me much more than just a logic game or a nerdy sport. Your sensational rhetoric had pushed us up in so many rounds and your boiling passion had cheered me up all the way. I appreciate all the time and effort you dedicated and all the trust you placed in me. We must definitely team up again sometime in the future.


ありがとうございました!

以下、結果報告です。

Open Semi Finalist: Keio 1 (Shimon Nakayama, Sayaka Nakano)
Open Quarter Finalist: Keio 3 (Kiyonobu Tamai, Hirokazu Matsuda)
EFL Grand Finalist & Open 1st Reserved Breaking: Keio 2 (Atsushi Sumida, Shunsuke Kanda)
EFL 4th Best Speaker: Atsushi Sumida
6th Best Adjudicator: Sho Masuda
Breaking Adjudicators: Hikari Tamura, Sho Masuda

そして、ChampionのTokyo 3のお二人もおめでとうございます!また、今回は日本での開催ということで、KDSからも多くのメンバーがOrganizing Commitieeとして運営に関わりました。特にconvenorのかすみさん、本当にお疲れ様でした!(中の人もひっそりとタブを手伝っておりました(小声))

また、私が広報を担当した一年間ブログを読んでくださった皆さん、ブログの原稿を書くのに協力してくれたKDSのみなさん、本当にありがとうございました。これからもどうぞ本Webサイトをよろしくお願いします!