最後のワールズ

みなさん、こんにちは〜!今回はKDS21期の俊哉さんにブログを書いていただきました!

俊哉さん、ディベート、KDSのことがたくさん詰まった ※全ディベーター必読※ のブログになっておりますので、是非皆さん読んでください!

それではどうぞ〜↓↓↓


最後のワールズ

☆前置き

◎自己紹介

 こんにちは、KDS21期、経済学部4年の小澤俊哉 (Toshiya Ozawa)です!英語パーラメンタリー・ディベートは大学から始め、現時点で3年半です。現在は国際大会を中心に出ています。ちなみにブログを書くのは7回目です。他に出ている人が少ない国際大会に出ている関係で、多分KDSブログ史上、一番ブログを書いています(笑)。書くのは結構好きなので、承諾しています。

 

◎謝辞

 練習や大会で熱心に教えてくださる方々、切磋琢磨/仲良くしていだいている方々、応援をしてくださった多くの方々、大会運営の方々、諸大会に参加する上で動いてくださった執行部の方々、そして何よりWUDCに一緒に組んでくれたようへい、いつも本当にありがとうございます。今後ともどうぞよろしくお願いします。

 

◎結果

 結果はESL Quarterfinalist※、予選ではチーム点は16点(オープン6ラウンド13点+サイレント3ラウンド3点)でスピーカースコア1400点で予選92位、多分ですけれど、予選では日本人チーム史上3位、ESLブレイクは日本チーム史上5組目、個人では703点、平均78.11点という結果でした。前回のWUDC 2020ではチームとしては13点、スピーカー1388点、個人としては694点だったので、1年半である程度成績を伸ばすことができました。

 

※英語を第二言語として学習した(English as Secondary Language)参加チームの枠で予選を通過し、ベスト16に入ること。

 

◎注意書き

 ここに書いたことは僕一個人の見解に過ぎないので、全てを鵜呑みにしないでください。またKDS全体の見解ではありません。僕自身も学んでいる途中なので、まだ力不足でしっかりと実践できていないことも多くあるし、今後、考え方も変わると思います。また人によって、様々なアプローチ、スタイルがあると思うので、その一つとして捉えてください。

 

◎その他

 ポジティブとネガティブの両方の感想と、メンタル面のことと、(ジャッジ以外の)ディベートの技術への自分なりのアプローチに関して、初めて書きます。他にも書こうと思ったことあったんですけれど、長くなりすぎたので、目次に載っている感じで終わりました。

 

◎目次

・こっちの方が見やすいかもしれないので、Google Docsのリンクも添付しておきます。いつか削除するかもしれないので、ご了承ください

https://docs.google.com/document/d/11HufmW96J0Js6SEFSiVC3S8PCa3fNXqPDZIkemvkd2g/edit#

・サイト内検索を使うと、探したい内容の場所に移動できます。例えば、Windowsの場合:〔Ctrl〕キーと〔F〕キーを同時に押すと、Macの場合:〔command〕キーと〔F〕キーを同時に押すと、iPhoneの場合、画面の下にある「↑」をタップして「ページを検索」をタップすると、検索ウィンドウが出てきます。そこにキーワードを入力すると検索が出来ます。

・目次です!めっちゃ長くなってごめんなさい。


最後のワールズ

☆前置き

◎自己紹介

◎謝辞

◎結果

◎注意書き

◎その他

◎目次

☆感想

◎感想

◎メンタル面について

◎一年半前のWUDC 2020後の目標

☆準備

◎チーム探し/チームビルディング

◎海外大会の経験

◎前哨戦

◎コネクション作り

☆練習

◎直観を磨く

◎プレパ/プレパ練習

◎スピ練/録音

◎リサーチ/ケースファイル

①どのように役立つか

②枠組み

i) 基礎的な理論 

ii) 教養・歴史・背景・世界観

iii) 時事問題

③進め方・まとめ方

i) モーションベース

ii) イシュー別・対立軸別

iii) テーマ別・項目別

④ソース

◎手引書

◎分析/統計

◎ジャッジ

◎目的・道のり

☆心構え

◎過去に囚われずに新たな挑戦をすること

◎様々な人と組むこと

☆技術

◎立論

①How to Prove

②How to Say

③What to Say

◎反論/比較/BP Deputy

◎POI

☆大会中のメンタル

◎修正能力

◎土壇場での勝負力

◎Glass Ceilingを崩すこと

☆その他ディベートに関して

◎前回との対戦相手の違い

◎得意・苦手分野のアプローチ

◎メモの書き方

◎ポジションの対応力

☆観光・休息・食事

◎観光

◎休息・睡眠

◎大会中のメンタルコントロール

☆試合の振り返り

◎R1 OG 2位 77 1試合2点

◎R2 CG 4位 77 2試合2点

◎R3 OO 1位 79 3試合5点

◎R4 CO 1位 80 4試合8点

◎R5 CO 1位 80 5試合11点

◎R6 OO 2位 79 6試合13点

◎R7 OG 4位 78 7試合13点

◎R8 CG 4位 75 8試合13点

◎R9 OG 1位 79 9試合16点

☆過去のブログ

☆写真


☆感想

◎感想

 今までSNSやKDSブログで基本的にプラスのことしか発信していなくて、違った印象を与えていて、色々な面から良くないかもって思ったので、自分自身の葛藤やネガティブな感情も一部だけですが、正直に書いてみたいと思います。

 WUDCの前の5、6月は色々と積み重なって燃え尽き症候群になっていました。チームでの練習は2か月間でプレパ週1,2回とラウンド練5試合と大会3個はありましたが、今まで個人練をやってきたのがほぼゼロになりました。正直、今まで強いチャレンジ精神の下でIAやACで海外大会に積極的に参加していた時もあったし、自分なら大丈夫だと思い込んでいたのですが、そんなことはなかったです。

 誰にもWUDCに向けての不安や懸念をちゃんとは話せなくて孤独になってしまってBurn outした、いつも理想を高く持つことでモチベーションを高めていたけれど、ブレイクできるのではないかという自信を強く持ってなかった、どういうディベートを目指したいのかがわからなくなった、ワールズでチームを引っ張るだけの力があるか自信がなくて疑心暗鬼になったなどなど。振り返ると、この辺りが原因かなと今は思っています。(今は周りの仲良い人々のおかげで、大丈夫です!)

 とはいえ、無理に個人練をせずに、距離を置いたことで自分のディベートに対するフィロソフィー通りに楽しいと思える範囲で続けることができたり、ディベートの代わりにしていた勉強も本番に生きたり、個人練が減っただけでチームでの練習はしっかり目的意識を持って取り組めたり、その時の対応は悪くはなかったとは思います。ただ誰かに話したり、相談したりできてれば、よりよかったかもなぁと思います。

 大会中(特に前半6ラウンド)も正直すごい不思議な感じでした。83スピーチができるほど調子は良くないけれど、77-80くらいでどうにか勝てるスピーチが続きました。なんでこんなにうまくいくのだろう、サイド/モーション/ジャッジなどの相性の運が異常に良すぎるなぁって考えていました。R6終了時に13点で正直わけわからなかったです。

 久々に大舞台でうまくいく嬉しさを噛み締めたり、どうしても自分への期待が上がったり、同じ点数にいるチームを見て怖さもあったり、前回の経験との明らかな差があって混乱していたり、想定外すぎてサイレントラウンド、特にR7、R8は気持ちがふわふわしていました。R7は実力不足で4位になり、R8は最初に感じた先入観に囚われて勝ったことがある相手に有効なエクステンションを出せずに負けて4位になり、雲行きは怪しくなってきました。R9のアロケの時にR6終了時点で7点のチームがいて、やっぱそうか、R8は4位なのか。

 R9前では結局、去年と同じ13点。ESLブレイクにはOGで1位を取って16点を取る必要があるという状況となりました。プレッシャーが大きすぎて思考停止した1分もありました。モーションのコンテキストはわかるけれど、GOVむずいなぁ。OPPはこういう話してきたらどうしよう。むずいなぁ、行けるかなぁって考えていました。でも、こんなこと考えていても、どうしようもないし、やるしかないと思ってめっちゃ集中しました。プレパは少し微妙でようへいに申し訳ない気持ちがあったけれど、OGからGOVの世界での変化を色々な角度から埋めたり、even ifを出せたり、行けているはずかなって感じでした。

 そこのOGで1位を取れました。ブレイク発表の時になかなか呼ばれなくてやばいかなと思っていた中でESLで14位で呼ばれてKeio 1が呼ばれてようへいとガッツポーズしてハイタッチした瞬間も最高だったし、過去の自分を超えられたっていう意味で精神的に成長を感じられてうれしかったです。一番うれしかったのは、多くのお世話になった方々(先輩・同期・後輩)から祝福してもらえたことです。素直に本当に嬉しかったです。自分がブレイクしていいのかなって気持ちはも少しありますが、結果的にはパートナーのようへいやお世話になった方々のおかげで、どうにかブレイクできました。ESL QFは似た論題やったことあったのに、考えたことあるケースが浮かばなくてそこはかなり悔いがありますが、大会中に関しては、やれることはやり切れた大会だったと思います。

 一度は熱が冷めていたけれど、またやる気がかなり出てきていますし、楽しみな大会やチームが待っています。楽しむことを忘れずに、競技としても(少なくとも年内は)続けていくので、今後ともお願いします。

 あとワールズが終わってから、今までのディベートの出来事を振り返っていたけれど、めっちゃ恵まれていたなぁって思います。常に仲良くしてくれる人、応援してくれる人、熱心に指導してくれる人、練習してくれる人、組んでくれる人に恵まれています。今まで関わってくれた多くの方々に本当に感謝の気持ちでいっぱいです。これからも見守っていただけたり、応援していただけたりするととうれしいです。

◎メンタル面について

 完全に余談です。大事だと思ったので、悩んだけれど、今の自分なりのアプローチを書いて見ようと思います。正直、僕が書いたところで、どのくらい意味や説得力があるかわからないし、人それぞれにあったアプローチがある部分だと思います。具体的なことはWUDCを少し書くくらいにとどめておきますが、過去の大会でも、日々悩んだり、プレッシャーを感じたり、悲しかったりすることは今まで何度もあるし、今もあるので、それらを振り返った時に今の時点で大事かなって思っていることを書こうと思います。

 

・自分に優しくする

 我慢することを美徳としない。ここは頑張らないといけない、周りに迷惑をかけないっていう考え方から、自分に正直になれない、責任感を感じてやり切ろうとしてしまう、自分で抱え込んでしまうっていうのは僕の場合、結構ありました。我慢を強くしすぎていないか注意するのが必要だと思います。

 自分のせいにしない。たしかにジャッジやサイド、モーションのせいにせずに、自分自身の改善点を考えることもいいことなのですが、それは結構メンタル的に大変です。そもそもディベートは運要素かなり大きいので。自分を責めすぎないように気をつけるといいかもしれないです。

 自分の性格やメンタルのことを知りつつ、無理せずにバランスを取るがいいのかなと思います。(最近、MBTIっていう10分くらいでできる性格診断テストをなんとなくやってみたんですけど、かなり当たっていて参考になりました。)

・誰かに話せる

 過去の僕の場合、上記のような事が結構あって、自己解決しよう、自分でどうにかして乗り越えようと思ってしまっていることが多かったです。最近になって思うのは自分の悩みや不安を誰かに話せる、話しやすい相手がいるっていうのは本当に大事だなぁってことです。自分自身も楽になるし、過去の経験を共有することで自分だけではないなぁって思えるときもあります。もっと早くそれができてれば、過去の色々な場面でよかったなぁと思います。周りに恵まれているおかげで、今も色々なプレッシャーはあるのですが、精神面は基本的に大丈夫です。

 悩みとかもそうなんですけれど、誰かに対して、ポジティブなことも素直に言えるといいなぁって思います。感謝や褒め、祝福など。言ってもらえると、きっとすごいうれしいと思うし、僕の場合は続けてこれた理由の一つでもある気がします。

・休む/距離を置く

 無理せずに大会に出ない期間やディベートに触れない時間を作る、ACやIA、ジャッジのオファーを素直に厳しいと思ったら承諾しない、IA Formを出さないなどです。出るとしても、メンタルヘルスを考慮して選ぶというのに気をつけています。

 別の趣味や好きなことを作ってバランスを取れるといいかもしれないです。アイスホッケーや絵を描くこと、友達や家族とおいしいものを食べること、旅行に行くこと、スポーツを見ること、YouTubeを見ることなどが好きなので、それらをしています。ディベート以外のものの方が楽しいと感じた場合はそちらを優先するのもいいと思います。

・結果以外の楽しみを持つ

 結果を完全に頭から離すのは正直厳しいと思いますが、他のことに対して楽しみを持つようにしています。仲良い人とのご飯や雑談だったり、新しい発見があることだったり、好きなスピーチが聞けたり、自分自身の成長だったり、色々あり得ると思います。最近、誰かと一緒に練習したり、話し合ったりするのが一番楽しいなぁって思います。

・参考

 海外ディベーターがメンタルヘルスに関して書いている文章です。最近、改めて読んだら、参考になったので、添付しておきます。僕が書いたことと被っている部分もあります。

Mental Health and Debating 

https://docs.google.com/document/d/1HFvPcwhmVF58h7HU2hXqZMtmHuvqFCXDUm-K3IVbpQo/edit#heading=h.dhlw5fvql9iz

◎一年半前のWUDC 2020後の目標

(1)現実世界に基づき、勝ち筋が見えるスピーチをどの論題でもすること

(2)聞いている人にわかりやすい、「伝わる」スピーチをすること

(3)人の記憶に残るような自分らしいスピーチスタイルを確立すること

(4)ワールズでブレイクすること

(5)楽しくディベートをし続けること

※WUDC 2020のブログ(http://keiodebate.org/blog/wudc_2020/)より

 1年半前に挙げた目標は上のような感じでした。基本的には完全までは程遠いけれど、徐々に達成できているような気がしますし、今の時点の目標も似たような感じです。(6)を加えるとしたら、チームメイトにも一緒に出てよかったと思ってもらえるように自分なりに頑張ることです。具体的な取り組みは上で挙げたような練習になると思いますが、内容ベースの目標だからこそ、比較的持続しやすかったかなと思います。ただ、(3)ができている気がしないので、あと半年で自分のスピーチ、自分のスタイルって何だろうっていうのを考えながら、追求していきたいです。最近、そのために自分のスピーチを分析して、何を目指したいかを考えています。

 

☆準備

◎チーム探し/チームビルディング

 まず前提の背景として、元々は馬場さんと組む予定でABPやDoxbridge Worldsなど出ていたけれど、WUDCの日程には都合がつかず、新たなチームメイトを探すことになりました。就活の関係で練習時間がメジャー大会にしては過去最短になる可能性が高かったため、そもそも出るか非常に迷いました。ただ、やらない後悔は一生残ると思ったので、出ることにしました。就活の関係で調整が少なくてもどうにかなる人、過去に組んだことがある人、海外大会に出ていてメジャー大会に興味がありそうな人、テスト前でも大丈夫そうな人がこの状況ではいいと思い、考えました。その中で組んだ時のシナジーを中心に考慮して何人かに声を掛けて、最終的にようへいが直前にも関わらず、承諾してくれました。しばらくスピーチを見る機会はなかったけれど、実は1年半前のBPノービスで組んだことがあってその時にうまくいった(苦手なモーションが出たR4以外)記憶があり、ロジックとストラクチャーを強みとするスタイルを共通している点を考慮しました。

 ディベートはチーム競技。個人の実力ももちろん大事だが、チームメイトを見つけられるか、チームワークがいいか悪いかで一気に成績は変わります。僕は恵まれていて、3年半で色々な人が過去にメジャー大会や海外大会で組んでくれたため、出ようと試みた大体のメジャーに参加でき、今回のワールズの結果があると思います。(今まで組んでくれた方々、本当にありがとうございました。)

 チームの流れは経験上、最初は上手くいって、途中は苦戦して、その壁を乗り越えられるかっていう流れが多いような気がしますが、今回は限られた時間でチームとして成長しないといけないという難しさがありました。個人的には就職活動を4月末までやっていたり、お互い違うチームで春Tに向けて練習したりしていたので、本格的に練習を始めたのは5月くらいでした。時間がないからこそ、後で書いたように、明確に目的意識や課題意識を持って取り組みました。

 チーム・ダイナミクスにも注意を払いました。プロアマで組んだチームであり、学年やメジャー大会の経験の違いから上下関係が生じ、マイナスに働く恐れがあるのは自分自身の経験より、最初から念頭においていました。それが緩和できるように、信頼関係やフラットな関係を築くことを意識していました。また結果が出ないときも結果より内容や成長を重視してよくなっている部分を褒めたり、整理したり、ポジティブな雰囲気づくりを心掛けたりしました。相手を信じることも大事だと思います。ファーストの時点でニュアンスを含めて分析を出せると信じたり、積極的にアイディアや質問を聞いたり、立論を部分的に任したり、反論を任したり、チームメイトを信頼することが大切です。色々と意識していましたが、最終的にはパートナーのようへいの人間性が大きかったです。謙虚でありながら、素直ですし、しっかりと自分の意見をもって望んでくれて心強かったです。ありがとう。

 チームの総合力を高めるために、チームの連携を高めたり、お互いに自分自身の課題や弱みを改善のために取り組んだりすることを今回の準備や練習で重視しました。

◎海外大会の経験

 数えてみたら、2021年7月時点で海外大会に合計38大会(+8,9月に3大会)も出ていました。こんなに出ていたことに自分でもびっくりしましたが、どれも記憶に残っていますし、今の自分のディベートにつながっていると思います。ずっと結果が出ていたかというと全くそんなことがなく、ディベーターでブレイクしていたのは13/25ということで半分くらいです。それだけ悔しい思いをしてきたし、毎回その悔しさに向き合えたのかもしれないです。

 海外大会に出ることはレベルの高い相手や違うサーキットのディベーターとの試合経験、海外のトレンドの把握、コネクションの形成などのメリットはあります。コロナ禍で大会がオンラインに移行したことで、金銭的負担、日逓調整、パートナー探しなどの参加障壁が大きく下がったのを生かし、より積極的に参加しました。

・過去の参加歴

※学年(ブレイク数/出場数)

・1年 (D:2/3+J:1/1)

Debater: ADI, NEAO, BDO

Judge: ICUT

・2年 (D:1/4+J:1/1)

Debater: ABP, NEAO, SMU BP IV, WUDC

Judge: TDO

・3年 (D:8/14+J:6/6+C:5/5)

Debater: AEDC, APAD, TODO, PODO, RMO, ANU Pre-Australs, Australs, TAYDO, IBA Nations League, MIDP Pre-ABP, ABP, JBP, Doxbridge Worlds, AUDC

Judge: YDO, MNIDC, KIDA, UADC , NSDO, CABP

CAP: NEADC, SD, HPD, KDO, IIT BHU PD

・4年7月時点(D:2/4)

Debater: AEDC, NTU Pre-Worlds, ABPC, WUDC

◎前哨戦

 練習はプレパ練が中心で、WUDC向けのラウンド練は2ヶ月半で誘ってもらった4試合くらいしかやっていないので、大会で主に実践を練習していました。5~7月で3大会(MIDP AEDC, NTU Pre-Worlds, Australlian BP Championship)に出場しました。NTU Pre-Worldsでブレイクできましたが、3大会13試合21点で、調子は微妙でした。ただ結果より課題を見出して改善したり、新しいことを試したり、チームの勝ちパターンを確立したりするのが目的だったので、気にしないようにしました。あくまで通過点と捉えるようにしました。その中で不慣れなロールへの対応、レベルの高い相手への対応が課題として浮かび上がりました。国際大会で実際、海外のジャッジで試さないと、上手くいっているか分からない部分もあったり、海外のディベーターのスタイルに慣れることができたりしたので、3大会出てよかったなぁと思いました。

◎コネクション作り

 知り合いのジャッジが多いと、不当な扱いは受けにくいし、フィードバックも丁寧にしてもらえる可能性が相対的に高いです。また変な不安を持たずにスピーチできたり、ホームな環境でやれていると思えたり、力を発揮しやすいです。今回、最初の5試合は誰かしら知り合いがパネルにいましたが、いいスタートを切る上で重要だったと思います。また色々なアドバイスをもらえました。今回も助かりました。

☆練習

 WUDC 2020終了後の1年半、時期に応じて課題や目的を設定し、様々な練習を行ってきた。その主要なものを紹介していきます。

 

◎直観を磨く

 ※つい最近になって考え出したことで自分でもまだうまく理解や言語化出来ていないので、気になる人だけ読んでください。

 練習の重要な役割の一つに直観を磨くことがあると思います。直観とは、脳が過去にインプットしてきた経験・学び・思考の蓄積より、無意識に答えを引き出してくる高速の脳の意思決定プロセスです。BPディベートでは15分の準備時間とほぼ止まらずに進み、自分の前に最大で約50分の議論が展開され、その中で思考を重ね、複雑な問題が絡む論題に関して、スピーチをしないといけないです。全ての思考を意識的に包括的にするのは時間的に処理能力的にも限界があるはずです。おそらく多くのディベーターは、少なくとも僕は、本番の試合中の9割の勝ちにつながった動きや技術を直観的に無意識に思いついてやっていることが多いです。僕自身は試合中に出来ていることをレクチャーなどで言語化することはできますが、実際にそれを一つ一つ本番の試合で意識的にやっているかと聞かれるとそんなことはないと言えます。例えば、試合で出来ていることをかなり細かく分ければ100個以上のチェックリストができる気がしますが、意識的に取り組むのは直近でミスったポイントやジャッジの特徴を踏まえたポイント、2,3個くらいです。ルーズリーフの上とかに注意点として書いています。あるいは試合中に状況に応じて気を付けないといけないことが自然と思いつく感覚です。これは色々と考えた結果、経験や練習に基づいて直観的にやっているのかなと思っています。

 では、その直感をどう磨くか。大まかに言うと、①レクチャーやフィードバック、議論を通してどのような技術や考え方があるのかを知ってみる、②自分なりにも研究したり・考えたり・反省したり・整理したりしてみる、③何個かずつ意識しながら練習してみて定着させる、④いくつかやっていく中で効果や相性、好みに基づいて優先順位をつけたり、取捨選択をしたりするなどの過程があるのかなと思います。これを各テーマや技術で何度も繰り返したり、行ったり来たりしているうちにいつの間にか無意識にやっていることが増えたり、精度が上がったりしているような気がします。

 また必ずしもここまで段階を全て踏んでいるかって言うとなんか違うかもしれないです。過去の試合、プレパ練習、ケース練習、議論、リサーチで得た経験・学び・思考の蓄積を通して直観が培われているものもあります。上に書いた過程自体もいつの間にかそういうやり方で練習していたし、言語化が難しいです。自分の中で一つ一つを自分なりに集中して考えながら、取り組んできたのはたしかなので、その積み重ねだと思います。

 本題に入る前に他に言えることとしては、自分なりに考えて試行錯誤や経験を重ねることが重要であるということ、僕自身が練習や技術等に関して書いている内容は言語化しきれていない、美化をしてしまっている可能性があることなので、その辺を念頭に読んでほしいです。

◎プレパ/プレパ練習

 まずプレパ練に関して書きます。前述のように、ラウンド練は4試合くらいで、プレパ練+スピーチ練を基本的にしていました。

 Openingの練習ではファーストのスピーチ練習とセットでやっていました。オープニングのプレパは3分まで各自で考え、7分くらいまで対等にディスカッションをして、その後、僕がスピーチを構成しながら英語で渡していくという形式が基本的なスタイルでした。

 これが上手くいくためには僕がようへいに合わせて丁寧にわかりやすく伝える必要もあるし、自分の特徴や構成、マターを知ってもらう必要があると思ったので、何回も様々なテーマで練習しました。プレパごとにペースは良かったか、分析でわからない部分がなかったかなどをようへいに確認し、話し合いながら、改善していきました。自分自身のメモはサインポストやキーワードなどで最低限の状態で、英語で渡せるようになる必要があるので、練習を重ねていく中で、即興力も上がったと思います。また自分のケースの立て方や様々な論題のアプローチも体系化する機会にもなり、よかったです。

 プレパだけだと本当にうまくいっているのかわからないので、スピーチまでやっていました。その上でフィードバックをするという形を取っていました。良かった点や改善した点を確認してから、レトリック、ストラクチャーなど細かい部分も含めての改善点や分析の修正点、共有方法の改善点を話し合いました。プレパで時間的にできなかった部分の議論も終わった後によくしていました。

 Closingの練習もしました。どのような議論があり得るのか、どのようなイシューがあり得るか、どのようにそれをパッケージするか、相手からどのような議論が来るかを考える練習をしていました。普通の練習だけれど、ただそれをいかに丁寧にできるか、目的意識を持ってできるかが重要です。同じ練習をしていても、何を感じながら、考えながらやっているかで、結果は異なると思います。

 今回はスピ練を優先したくてあまりやっていないですが、一周プレパ練を馬場さんと組んでいた時にやっていました。OG⇒OO⇒CG⇒COという順番で同じ論題を試合だと思ってプレパをする方法です。クロージングの順番では一回15分間本気で考えた自分のオープニングのマターを超えないといけなくなるので、思考力がつく。また両サイドの話を本気で考えるので、イシューが見えやすくなったり、反論からのエクステンションを考えたりすることができる。また自分の癖や見落としがちのポイントを俯瞰できます。すごい時間はかかるけれど、深い分析を考えたり、エクステンションを考えたりする練習としてありだと思います。

 最後に、プレパで気をつけていたことは雰囲気作りです。新しい人と組むと自然体でできなかったり、先輩と組むと委縮してしまったりすることがよくありました。それを阻止するために、雑談を挟んだり、プレパ中に質問を積極的に挟んだり、反省点やフィードバックを聞いたりしていました。プレパ中に話している時間は特にクロージングの時は偏りは少なかったと思います。

 

◎スピ練/録音

 自分のスピーチを録音して聞き直して復習したり、繰り返したりすることも頻繁にやっていました。ジャッジや相手の気持ちになって聞き直し、課題や改善方法を考えるのが基本的な流れでした。無駄な部分はないか、もっと効率的に言える部分はないか。抑揚はつけられているか、聞きやすいか、気持ちはこもっているか、かんでいないか、発音は適切か。サインポストはわかりやすいか、レトリックは適切か、ストラクチャーはわかりやすいか、話の順番は適切か、分析の説明方法がいいか、アサーションにニュアンスを織り込めているか。ロジックは織り込めているか、直感的なイラストはできているか。物によっては何度も聞き直した上で反省点や修正点を踏まえてスピーチをし直しました。大会中もラウンド間で聞いて調子を確認して調整していました。反省点を明確にし、優先度の高い2、3個だけは試合直前に紙の一番上に書いて、忘れないようにしていました。

 

◎リサーチ/ケースファイル

 リサーチとケースファイルは現時点で、ワードファイルで3000ページに及んでいます。前回のワールズでは重すぎるなぁって思いながら運んでいたのが懐かしいけれど、今回はオンラインなので、その心配がなかったです(笑)。記事や資料、日頃の考察のまとめなどを中心に1年生の時からコツコツと増やしていった感じです。ファイル自体が役に立つという側面もありますが、ファイルを作る過程で思考力をつけたり、理論を体系化したり、知識をつけたり、見せ方を考えたりすることができる側面もあります。特に3年生の春あたりなどラウンド練をせずにひたすらこれに時間を割いている時期もありました。いくつかパターンあったので、紹介します。ぼくもあまりやっていない時期もあるので、その時の課題やニーズ、時間、モチベーションに応じて自分のペースで進めるといいと思います。

①どのように役立つか

 リサーチで学んだ事実や専門家/当事者の考察自体が議論を展開したり、アイディアや方向性、分析を浮かんだりする上で役立ちます。直感的な分析/ロジックと具体例/描写のコンビネーションを抽出できるとベストです。現実に基づいた分析がやはり直感的だし、反論しにくいし、説得力があってディベートの試合に強く残ると考えます。

 リサーチを積み重ねるにつれて思考力も上がると思います。リサーチを通じ、先入観を変えたり、自分の知らない世界を知ったり、ある視点を得たりすることで、創造力の限界突破につながります。理論や過去の事例から導かれる法則性を知っていることで、別のケースや分野にも適用できます。類似の例から類推して考えること(アナロジー思考)もできます。事実や考察の示唆、リサーチの過程で考えたこと、感想の積み重ねがディベートのケースに生きると考えます。実際、リサーチを積み重ねたことで創造力や理解力、思考力が高まったと思います。

 

②枠組み

 リサーチをするときに何を意識するか、何を目的にするかも意識していました。ダブりはありますが、大まかに分類するとリサーチの中でも以下のような枠組みがあると思います。これらはリサーチがどうディベート力の向上につながるかという問いにも関係すると思います。

 

i) 基礎的な理論 

 基礎的な理論・構造・概念の理解などはargumentを立てる前提として理解しているか理解していないかで大きな差が生じます。例えば、経済や金融モーションなどは基礎的な仕組みや理論を理解していた方が議論を展開する上で役立ちます。あるいは国際機関に関する論題もその仕組みや課題などをわかっていた方がいいです。

ii) 教養・歴史・背景・世界観

 ある歴史上の出来事やその背景、文化や芸術に関する教養、特定の地域で起きている現象などを学んだり、それを通じて深まる世界観もディベートにおいて役立つと思います。造詣や教養が物事に対する理解力や創造力に結びついていると思います。例えば、パレスチナ問題、産業革命、コンセプチュアル・アート、アメリカ司法での人種差別、メキシコの麻薬カルテルなどの背景を新たに学べたり、考えたりする経験はケースの幅や完成度を高めることにつながります。

iii) 時事問題

 その時期に話題になっていたり、世界で起きていたりする出来事やトピック、テーマは論題になりやすいので、チェックしておくといいです。話題になっているからACがそれからモーションを考えたり、今だからこそ生まれた論題だから議論してほしいと思って出したり、話題になっているから知っていると期待されたりするためです。ニュース・メディアの記事を読んだり、ソーシャル・メディアで話題になっていたり、直近の大会の論題をチェックしたりすることで把握できます。何が起きているのか、どのようなディベートや議論があり得るか、この出来事の背景は何か、何が問題になっているのかなどを記事や専門家のまとめや考察を読んでおくといいです。

 

③進め方・まとめ方

 ぼくはできればワードのファイルにメモします。理由をいくつか挙げると、リサーチではその話をどう使うか、そのファクトがどういうnarrativeやlogicをimplyしているか、どのように構造化できるかを意識するのが大事だから、メモする中でそれを心がけるため(ただのコピペで終わっているときもあります)、単純に忘れないようにするため、量が増えてきたり、試合の緊張感があったりすると、自分がせっかく思いついたいい分析を忘れる恐れがあるため、メモにinspireされてプレパ中にいい分析を思いつく可能性があるためなどがあります。

 

i) モーションベース

 モーションベースで進めていく形が僕の場合、基本となっています。過去のモーションを見たり、最近の海外大会のモーションを集めたりする中で、短時間でケースの方向性を考える練習をしていました。その中でケースの完成度が低いものや汎用性が高いものをピックアップして記事を読んだり、動画を見たり、チームメイトと話し合ったり、いいものがある場合に音源を聞いたりしていました。それを踏まえ、メモをしていました。苦手分野やマイナー分野、時事問題の論題に意識的にフォーカスすることで安定していました。何度も考えたり、いろいろな角度から考えたり、自分以外のソースのアイディアや議論を通じてケースを立てる力が高まります。それを踏まえたケースをファイルにまとめています。

 モーションの集め方については、フェイスブックで各サーキットのディベートのグループに入ったり、イベントをフォローしたり、大会情報やタブのリンクが載っているスプレッドシートをチェックしたりしています。https://docs.google.com/spreadsheets/d/1R9s3MAh1H_7rJ9NQhO18p6o7bvekrIDTk27l7emXk6o/edit

ii) イシュー別・対立軸別

 ディベートでよく出てくるイシューや対立軸で言えることをまとめます。どういう分析や具体例、アナロジーがあるか、どういう言い回しだと伝わるかなどを整理します。また内容だけでなく、特定のテーマや議論で必要なレイヤーやバーデン、問い、取るべき戦略などをまとめています。この整理を踏まえ、試合やモーションごとに考えなおしたり、ニュアンスを調整します。モーションの全体像を掴んだり、試合の展開を読んだり、立てるケースの取捨選択をしたり、分析を思いついたり、試合を俯瞰したりするのに役立ちます。

iii) テーマ別・項目別

 各テーマの概念や用語、出来事などを整理しています。また人間の心理・バイアス、メディアや会社など特定のステイクホルダーのインセンティブ、経済の仕組み、政治制度の仕組みなどの分析をまとめています。知りたいことのキーワードをいくつか挙げて、GoogleやYoutube、ニュースメディアの検索欄で検索しています。

 

④ソース

 リサーチのソースになるものは無限にあると思うし、各ディベーターがそれぞれ色々なのを見ているので、色々見たり、自分が好きなものを探したりするといいと思います。僕が見ることが多いのを紹介します。

・ニュースメディア

 The Atlantic, The Guardian, Vox, BBC, The Diplomat, The Economistなどの記事や動画。他にもPink NewsやAl Jazeera Newsなどもチェックすることがあります。TwitterやFacebookでフォローして定期的に見る方法もあります。あと単純に気になるテーマをGoogleのNewsの項目やニュースメディアのサイトで検索して気になる記事を読んでいます。

・まとめサイト

 Wikipedia(全般), Stanford Encyclopedia of Philosophy(哲学), Investopedia(金融)など。BBCの概説の記事も見ます。Wikipediaに関しては英語バージョンで、上の方の概説と気になる項目をチェックしています。

・政府や調査会の民間向けの資料・記事

 検索すると出てきます。例えば、外務省や経産省などの政府系のサイト、中東調査会や日本貿易振興機構(アジア経済研究所のIDEスクエアなど)など。国際関係の学者の六辻彰二の国際情勢ガイド(https://news.yahoo.co.jp/byline/mutsujishoji)なども読むことがあります。

・動画

 個人的におすすめなのは、Vox(幅広いテーマの概説・https://www.youtube.com/c/Vox/featured)、Last Week Tonight by John Oliver(コメディー仕立てのニュース動画・https://www.youtube.com/user/LastWeekTonight)、Caspian Report(国際関係の動画・https://www.youtube.com/user/CaspianReport)、CrashCourse(幅広いテーマの概説・https://www.youtube.com/user/crashcourse/videos)など。動画は手軽に見ることができるので、おすすめです。場合によっては、見た上でより詳細なリサーチをするのもありです。

・歴史の基礎的な本:世界史の教科書(近代史)など

 高校で世界史(と日本史)を勉強したのは役立ちました。もともと受験教科の中では論述を書くのが好きで勉強していました。国際関係やある国のモーションに関して学ぶ時に土台になります。過去の出来事が分析のヒントになることもあります。

・ディベート動画

 試合やレクチャーの音源も聞くときがあります。音源の中で、僕はレクチャーを特に見ることが多いです。内容的なものや技術的なものなどで強いディベーターが解説しているものをチェックしています。聞く中で、単純にパクるだけでなく、よりいい分析やケースを追求したり、どう応用できるか考えたりしています。このスプレッドシートにおすすめなものをここに挙げておきます。

https://docs.google.com/spreadsheets/d/1ASnRSK7hI0UpNRElsx-M1Yw9UmaS-GUSW3pxXgaJqjU/edit#gid=1917028069

・日頃の考え

 日頃から考えたことや話し合ったこと、相手が立てていた議論や分析、試合の復習もメモしています。同じ論題や試合も間隔も空けて何回も考えているうちに色々と思いつくので、何度も考え直したり、復習したりしています。その中で特によかったものはメモしています。

 

◎手引書

 ディベートの手引書を作るイメージで、レクチャーやジャッジ・チームメイトのフィードバック、反省点、参考にしたいディベーターの音源や原稿からの分析などをまとめています。自分がある場面でよくやるミスやできるようになりたいことを書いておくことで、練習や試合前に見返して意識する。またある技術や概念に関して言語化・体系化することで、ディベートの理解を深める目的があります。具体的には、例えば、よくある間違い、ロール別で注意すること、Extension、Weighing、イントロなどについてまとめています。

 また自分の技術やモーション、メンタル面の強み・弱み・特徴・それらの変化をまとめています。チームメイトに伝えることで、チームワークやチームのパフォーマンス向上につながったり、過去と比べることで成長を実感できたり、自分の特徴を知ることでするべき練習を考えたり、勝ち筋・大会での勝ち方を確立したり、メンタルコントロールにも役だったりすると思います。自分自身についてよく知ることは意外と重要です。

 

◎分析/統計

 去年から定量的にもデータを集めていました。過去の成績から苦手や得意のモーション分野・ポジションのチーム点・スピーカースコアの平均や推移を分析したり、モーションの分野ごとの割合を調べたりして練習の優先順位に反映しました。また定性的データとして、ジャッジの特徴・評価をメモしたり、反省点やフィードバックを端的にまとめたりしていました。

 データ的にも僕の場合はモーション分野で言うとNarrative系が苦手かつ頻度が高い分野であり、ロールで言うとDPMやMGが苦手なので、自分なりの理論を考えたり、プレパ練をしたりして対策を行っていました。

 自分より上手い人にスピーチを分析してもらうのも大事です。Japan BP 2020に溝上さんと一緒に出たのですが、その練習の際に苦手な部分に関して、その要因と改善方法を掲示してもらったのは非常に大きかったです。頂いたアドバイスを軸に試行錯誤を繰り返した結果、多分改善したと思います。

 

◎ジャッジ

 ジャッジの特徴や海外のトレンドを把握するのは勝つ上で非常に重要だと思いました。国内と海外とでは求められることがそれなりに違います。どういう話が評価されやすいか、どのレベルまで証明するといいか、どのような試合の見方がされるか、どういう技術が必要かは海外で実際体感するのがいいと思います。傾向だけでなく、個人レベルでこのジャッジはこういう特徴があるというのを把握していると、スピーチがしやすくなると感じました。R1, R4, R5あたりは過去にジャッジを見たことがあり、自分のスタイルと相性がいいジャッジだとわかっていたので、何も心配せずに自分のスピーチを貫けました。

 今回の反省点としては自分のスピーチはアジアやオーストラリアではある程度通用するけれど、それ以外の地域だとそうとは限らない場面があるということでした。ヨーロッパ・サーキットと接触した大会は2大会くらいしかなかったというのは事実で、もう少し分析しておくべきだったという反省はあります。

 正直、今回のすべてのジャッジの見方に納得しています。いいジャッジがアロケされたというのもあるし、海外大会にたくさん参加する中で色々な見方を受け入れることができるようになったかもしれないです。前回のワールズではジャッジに納得出来なかった試合が多かったけれど、国際大会でたくさん経験を積んだからこそ、今ならその多くは理解できるようになってきた気がします。

◎目的・道のり

 時期や練習によって目的を持って練習するように心がけました。一つの練習を中心にずっとやっていたわけではなく、時期によって必要やテーマに応じて重視するものを変えながら、やっていました。新鮮味があってそっちの方が面白いし、色々な力をつけたいからです。今でもそうで、新しいテーマや練習を取り入れるようにしています。概略ですが、ワールズまではこのような過程でした。他の項目で書いた大会(秋T、JBP、ABPなど)は省いています。思い出や気づきはもっとたくさんあって、もっと書きたいけれど、我慢します(笑)。

 

【2020年1~2月】

 今はファーストのポジションをやる機会が多くなっているし、好きになっているけれど、当時はファーストをやった経験が少なかった(1年生時のエリザべ杯、ジェミニ杯、BPノービスのみ)ので、ファーストというロールに取り組みつつ、立論・ケース・Asianの戦い方の基礎やストラクチャーを学ぶことを目的としました。溝上さんと栗原さんとThe Kansai 2020で組ませていただき、初優勝もでき、とてもいい思い出になりました。今の自分の立論の基礎となる多くのことを学べたと思います。

 

【2020年3~5月】

 よく出る論題を中心に、一人でリサーチとケース練をひたすらやっていました。なるべく継続している練習だけれど、特にこの時期はコロナの関係で暇だったので、多めにやっていました。詳細の方法に関しては「リサーチ・ケースファイル」で書いています。ここでの思考の積み重ねが分析力という今の強みにつながったと思います。

 またこの時期に出たTDOで1位ブレイクすることが出来たり、シドニーに勝利したりできました。この大会でチームワークやダイナミックスを最大化する重要性を学び、プレパでのコミュニケーション取り方や役割分担を考えるようになりました。

 

【2020年4~6月】

 PM/LO形式のスピーチ練習を週三回の頻度で淳さんと朝練をしていました。ひたすら立論する中で、BPのファーストの感覚を高めたり、短時間で考える中で頭の回転を上げたり、分析を埋めたりすることができたと思います。また火力や基礎的な構成力の向上も図れたと思います。直前に起きていたので、R1への対応力も上がったと思います(笑)。

【2020年6~7月】

 Australsに出ました。Australs形式は、POIなしで8分ちょっと(+リプライ4分ちょっと)も話さないといけないので、かなり話す力や話しを立てる力、分析を出す力を培ったと思います。また物量ではEPL相手に勝てないだけで戦略を考えるようにしました。Monash Australia Aに勝った時はPMから考えていた通りの試合展開になり、戦略通りに勝てて、国際大会で勝つために自分が目指すべきディベートスタイルというのが見えたと思います。

 

【2020年11月~2021年3月】

 基本的にジャッジやACで大会に出ていました。特に11月・12月のことやジャッジ・ACに関しては特にここで書きました(http://keiodebate.org/blog/judge_blog_2020/)。Doxbridge Worldsはハイレベルの試合に入れて自分のスタイルや強み、課題に気付けました。AUDCを紙を少なくしてみたら、上手くいったので、この大会以来、紙の枚数はだいぶ減っていました。

【2021年4月】

 就活は続けていたけれど、ある程度落ち着いていたので、春Tに出ることにしました。春Tの練習でラウンド練を6試合くらいやりました。色々試してみたのですが、分析を考えて分かりやすく構成する感覚を取り戻せたり、自分の悪い癖を認識できたりしました。前回の雪辱を果たせて初めての春Tオープンブレイクできました。また優勝もできて結果を聞いた時は正直かなりびっくりしました。1年生の時と3年生の時にエリザべで組んだ二人だったので、すごいエモかったです。このチームでAustralsに出る予定なのですが、楽しみです。ちなみに馬場さんのブログが面白かったです。(http://keiodebate.org/blog/jpdu-spring-tournament-2021/)僕も第一章と似た系統なことも書こうかなって思っていたんですけれど、他のことで長くなりすぎたので、今回はやめておきます。

【2021年5~7月】

 5月から週2回プレパ練を2~3時間ずつ行っていました。ラウンド練は2ヶ月半で4試合くらいしかやっていないです。時間もないので、それよりもスピーチ練の方がチームにとって重要だと思ったので、それを優先し、試合の実践は大会でカバーしました。初めての練習では目標設定や基礎理論の伝授、勝ちパターンの確認、疑問点の解消、質問回答、過去の試合の振り返りなどを確認しました。自分の理論を体系化して教えつつ、お互いの強みや弱みの共有を進めました。

☆心構え

◎過去に囚われずに新たな挑戦をすること

 色々と新しいことを試すことは無駄ではありません。時には無駄なことを考えて、無駄なことをしないと、伸びないです。失敗をいっぱい積み重ねる中で、少しでも新しいことに気づけたなぁ、うまくなったぁという瞬間の積み重ねが大事だと思います。今回もいくつか新しいことを試していました。練習のために大会でたとえ勝率が一時的に下がったとしても恐れずに挑戦できたのは良かったと考えています。

 ロジックのみに頼る限界性は感じていたので、あえて具体例やイラストを多めに織り込むスピーチを練習し、その辺の技術を高める練習をしました。ロジックが重視されている時代とはいえ、ロジックの説得力を上げるために直感性や具体性が重要であることが多いです。ロジックが複数ある中で自分のロジックを強くとってもらうために直感性を上げられたのはよかったと思います。

 普段と違うロールに挑戦するようにしました。BPにおいて、どのロールも4大会以上は経験できた。またWUDC, ABPなどのメジャー大会に関しても全部経験しています。両方できると、生きるイメージがあります。例えば、Deputy(セカンド)で培った思考力をファーストに生かすと、comparativeな分析、preemptiveな分析、比較を織り込めていわゆるrobustなケースを立てられたり、証明不十分なレイヤーを見つけられたり、戦略的にケースを立てたりできることにつながります。Deputyに関しては別のところで書いていますが、今まで通りだとスピーカーが変わらなくても、肝心な接戦の比較で勝てない恐れがあると思ったので、やり方をいくつか変えました。

 

◎様々な人と組むこと

 様々なスタイルやレベルの人と組むことで自分自身が成長できたり、話やプレパ、スピーチを通じて技術や知識を学べたりすることがあると思います。自分自身はどちらかというと立論が得意なので、反論が得意の人とチームを組んだり、またイラストが苦手だったので、イラストが得意な人と組んだりしました。特に3年生の時に印象的だった大会やチーミングについて、WUDCと関連させながら、少し書きます。

 秋T 2020ではエリザベのチームで、1年生のあいこと出ました。教えていく中で自分自身のノウハウを体系化したり、スタイルをが客観視できたり、自分自身も勉強になりました。また無駄をなるべく減らした上で勝てるケースを立てる意識や誰にでもわかりやすいストラクチャーを構成する力がここで身についたと思います。この大会ではいわゆるProAm系のチームで出ていましたが、意識していたことはほぼほぼ全部見抜かれていたので(笑)、あいこのブログを読むと、基本わかります。僕もWUDCの練習が始まる前に読み返しました。(http://keiodebate.org/blog/jpdu-autumn-tournament-2020/)ここでの経験はWUDCでのチームビルディングに活かせることができたと思います。またABP前後や大会中にあいこがめっちゃうまくなっているの見て、自分も刺激を受け、例えば、1月に音源やスクリプトを分析し直したり、スタイルの改善を試みたりしました。春Tのチーム名にもしましたが、馬場さんと組んだのもエリザべだし、エリザべは縁ある大会だなぁって思います。

 Japan BP 2020では溝上さんと出ました。プレパ練とスピーチ練とラウンド練をやる中で、基礎から学んでいました。前述のように苦手な部分の改善方法やBPのファースト、ケースビルディング、エクステンション、具体的なアクターに落とす重要性などを教えていただき、自分のケース・エクステンションの立て方やストラクチャーの問題点を認識し、改善する大きなきっかけになりました。BPで根本的に重要な考え方を学べたり、苦手な部分の克服につながったり、この大会でもかなり成長できたと感じました。また溝さんのスピーチやプレパからケースの立て方やcharacterization、context、ニュアンスの出し方を学び、取り入れるようにしました。まだ学んでいる途中ですけれど、ケースの説得性やrobustness、印象が上がったり、ジャッジと分析の評価の解釈がずれることが減ったりした気がします。オンライン大会でチームメイトと対面であって参加するのは初めてだったのですが、大会当日もとても楽しかったです。

 Last but not least、馬場さんと6大会も出ました。エリザべで学んだってこともあって共有している部分も結構ある一方で、得意分野や思考方法が対極に近かったので、お互いを補完すれば、理論上、上手くいくと思っていました。そしたら、TAYDO 2020で日本が活躍している中で、ブレイク落ちして悔しかったです。その後、色々あってかみ合うようになりました。TAYDO 2020とDoxbridge Worlds 2021を比べると、チームビルディングでこんな変わるんだなぁって思いました。一緒にハイレベルな舞台で戦ったり、反論の考え方やintuition pumpの部分など色々と学んだり、馬場さんとの大会の数々はWUDCにも生きました。詳細はもし機会があったら、その時にします。

☆技術

 詳細はレクチャーなどで体系化していきたいと思いますが、個人的に今大会で鍵となった技術やその自分なりの考え方について、簡単に触れておきます。ディベートに関しては、今まであまり自信ないし(これは今もですけど)、他の人と被るなぁと思って少ししか書いていなかったんですけれど、前よりはオリジナルな部分や今っぽい部分も最近考えるようになったので、念のため、書いてみます。他の人が言ってないことや具体的にやっていることや意識していることも少し書きます。あくまで今の僕がなんとなく考えていることで、あんまり自信ないので、鵜呑みにしないでください。

◎立論

 How to prove?(主張をどう証明するか?何を証明すべきか?)、How to say?(説得的にどう伝えるか?ジャッジにどう伝えるか?)、What to say?(何を言うかべき?何を戦略的に選ぶべきか?)を軸に意識していたことや考えていることに触れていきます。ディベートは正解がなくてそれが面白さの一つだと思っていますが、自分のスタイルを踏まえ、自分なりの答えを常に追求している中で、今考えていることを少し書きます。最後のは既に多くの人がフォーカスしていると思うので、最初の二つを重視します。注意点としては完全に分けることは難しくて、お互いに絡み合っているので、重複する部分や同時に意識することで初めて意味がある部分もあると思います。

①How to Prove

 僕がこれを強く意識するようになった大きなきっかけは2年生の時のAsian BP 2019 R5です。憧れのディベーター、Ashishにジャッジしてもらった時にもらったフィードバックは僕のディベートにおける転換点の一つです。試合の結果としてUT Maraにも勝ち、一位で80点ということでよかったですが、内容面で自分のスピーチを見直すきっかけとなる重要なフィードバックとなりました。“I think your labels are all very intelligent and very correct. You are making the right argument. I don’t think you are necessarily making the argument at its very strongest. For example, … Why? … You need to get to that level of analyses. … All your stuff is correct but you are stopping at 40% when you could do a lot more.”自分の話のロジックやanalysesがいかに不十分なのかということを気づかされた試合でした。これを機に、この主張の理由は何であるか、この主張の最大限を引き出すには何を説明しないといけないのかというのを常に意識するようになりました。前回のWUDC 2020のあたりにanalysesを丁寧に埋めていくのが自分のスタイルの一つとして確立していきました。 

 そんな中、ディベートのオンライン化がありました。元々近年は、昔と比べると、レトリックで直観的に伝えるだけでなく、直接的に伝える・中身をしっかり詰めることを求める傾向が強くなっていたと思います(音源を聞いている感じ)。ディベートのオンライン化の結果、現代ディベートではその傾向がさらに加速し、傾向として、Mechanism・Impact・Fact・Context・Characterizationなどのあらゆる側面や前提で徹底的な論理的説明が求められるようになったと思います。説得に十分とされる説明のバーが確実に上がっているので、また国内と国際大会でも差があるので、特に国際大会に出る際は注意するといいと思います。

 実際、この視点を達成するために個人的に意識していることをいくつか簡単に挙げておきます。本質的にかぶっている部分もあります。

 第一に、議論のpremiseや必要なレイヤーを意識しています。ある主張がまだ議論の余地がある主張と感じる場合は理由を考えるようにしたり、主張が成り立つ条件や前提を気にしたり、弱いLinkを切られないように補強したりという感じです。政治家はなぜ環境をdepriotizeする⇒それはなぜか?⇒政治家は短期的な政策を優先する⇒それはなぜか?⇒選挙のサイクルがあるから・心理的に市民は短期的なものにswayされやすい⇒それはなぜか?⇒Speculativeで感じることができないものよりを現時点で直接的に感じるものに対してバイアスがある。例えばこんな感じで、controversialな主張にはreasonableになるまで理由を考えていくイメージです。

 第二に、相手やジャッジの視点で考えることです。相手だったらどう反論されるか、ジャッジだったらどこが不十分と感じるのか、自分のケースを見直すようにしています。Is it mutually exclusive? Is it important? Is it true?という分析自体の問題を考えたり、相手だったらここを指摘するのではと考えながら、弱い部分を見つけて補強したり、相手の反論に対するpeemptionをしたりしています。また相手を踏まえた分析も意識しています。Why is A true?だけでなく、Why is A more likely than B?っていう視点やWhy is A comparatively B than C?という視点です。あるいはこのレイヤーは相手も同意するだろう、それとも争いが生じて試合の勝敗を決めるうえで重要になるだろうと言うのも考えて優先順位をつけています。

 第三に、頻出のテーマで使える分析、具体例、戦略・勝ち筋を蓄積することです。例えば、分析では人間の心理・バイアス、メディアや会社等の特定のアクターのインセンティブ、経済の仕組み、政治制度の仕組みなどがあると思います。また分析だけでなく、どういう視点やレイヤーを考えないといけないの、Argumentや話の系統によって証明責任の把握があると必要です。これに関しては、地道にケース練・プレパ練・ラウンド練の復習をして積み重ねていきました。また具体的論題や分析だけでなく、一般化して考えるといいです。例えば、narrativeのモーションに関しては、視点として、どういうメッセージか?どういう人が受け取るのか?どういう解釈がされる可能性が高いか?何がこのメッセージのexclusivityなのか?どういう行動やマインド、リアクションにつながるのか?なぜそれらが重要になるのか?などなどモーションやargumentによりますが、こういった視点を検討した上で、モーションやケースによって、ニュアンスをつけたり、今回の試合で重要になるレイヤーを取捨選択をしたりしています。

 第四に、分析の証明方法のアプローチや順番を工夫することです。 Logic(帰納法・演繹法)を用いる形、IllustrationやNarrativeを用いて直感に訴える形などが簡単に言うとあると捉えています。分析によって相性がいいものや説明しやすいものがあったり、組みわせることで説得性を上げたり、ジャッジとの解釈のズレを緩和したりすることにつながると思います。個人的にロジックが思ったより、受けが良くないということがあったのですが、IllustrationやNarrativeといった直感的な描写や例を先に敷くことでジャッジのロジックの解釈が変わりました。ContextualizationやCharacterizationをも大事だと考えています。ディベートが起きる状況・場所やステイクホルダーの特徴づけることで、議論を理解する前提となる土台をしっかりと説明することでそれを想像しながら解釈できて議論が分かりやすくなったり、自分たちの議論が立ちやすい有利な戦場を敷くことにつながったりしていると考えています。

 これらはディベートをしたり、ジャッジをしたり、音源を聞いたりする時に内容だけでなく、こういった点を意識して考える練習をしたり、力をつけたり、ノウハウを学んだりすることで、高めていきました。自己分析をしたり、他の人と話したりして考えた結果、多分調子いい時はこれらが多分できています。

②How to Say

 どのように言うのか、どのように見せるのかも重要だと考えています。ディベートはロボットやAIが厳密にジャッジしてくれるわけではないです(そのレベルに近いジャッジも稀にいます)。全く同じ内容を話していても、どういう見せ方やどういう話し方をするかで大きく変わると感じています。

 僕の場合、下級生の時は、見せ方はイントロ、サインポスト、AREA、ナンバリングなど、話し方は噛まずにスムーズに話せるか、英語の発音・アクセントをよくするかなどを聞いたことあって少し意識していたという感じでした。実際、これらは良く聞くと思います。3年生や4年生になってから、より細かく意識してみると、他にも意識できると思いました。見せ方に関しては、どういう構成や順番で話すか、分析内でもどういう形でプレゼンするか、どういうイントロやサインポスト、問い、切り口にするか、帰結や方向性、戦略が分かりやすいか、ディベートにおける分析の位置づけが伝わるか、ジャッジに取ってほしい解釈が伝わるか、レトリックは伝わるかなど。言い方(マナー・スタイル)に関しては、どのように抑揚をつけるか、どのようなトーン・スピードで話すか、どういう感情で話すか、ジェスチャーをどうするか、どう変化をつけるか、どう休憩をはさむか、どう伝わりやすくするか、聞きやすくするかなど。これらの一つ一つの積み重ねで大きく変わると思います。また人それぞれのスタイルと言うのは生まれると思います。

 自分自身のスタイルを少し書いてみたいと思います。色々ある中の一つとして捉えてください。僕が一番イメージしていることは、ジャッジに自分のケースをたどりやすくする、ノートを取ってもらいやすくするということです。そうすることで、ジャッジと自分との間でケースや分析、試合の解釈をなるべく減らすこと、自分の見方をストレスない形でジャッジに正確に伝わる状態にすることを目指しています。ちなみに、ジャッジするときのマナーや見せ方に関しても、これを目指しています。

 スタイル(マナー)に関しては、観客を引き込むような芸術のようなスピーチをしてみたいっていう憧れはあるんですけれど、今の時点で自分自身の特徴や性格、強みにあった形を模索しました。その結果、現時点で上のようなイメージやスタイルになりました。一部、意識している点を挙げたいと思います。

 まず見せ方に関してです。サインポスト・サインポスト内のクエスチョン・Statementと帰結は丁寧に言うようにしています。Conclusion comes first。最初に帰結を持ってくることで、ジャッジにこういう方向性で行く、こういう勝ち筋で行くという最終的な着眼点を明示化して分かりやすくするのを意識しています。サインポストやクエスチョン、箱の質にはこだわっていて、大雑把なもの(Principle, SQ, What happens under GOV/OPP sideなど)はなるべく避けて、簡潔さを保ちながら、なるべくニュアンスや具体性を出すように心がけています。キーワードを入れたり、相手を踏まえた言い方をしたり(Even if A、Even in the best/worst case scenario, Why A is likely than B? Why is A more important than B? Why is A the only way to B?など)するように気を付けています。また帰結をしっかり言うように心がけています。色々な分析を挙げたけれど、これらから結局言いたいのはこれですという帰結を明確にしたり、あり得る解釈やシナリオ、試合への影響をいくつか挙げたり(The implication, therefore is A, B, C. Their premise of A is strongly diluted. There is strutual reasons why A is likely than B. Even in their best case scenario, we prove A.)、そうすることで次の展開や全体の流れを分かりやすくしたりするのを意識しています。またニュアンスやレトリックが効いたフレームを出すように心がけています。(What all of these mean is that: there is no alternative to A, the vulnerable A is systematically disenfranchised. This happens in the unique context of the motion. the most vulnerable context of developing nationsなど)

 分析を出すときの構成にも注意しています。AREA(Assertion, Reason, Example, Assertion)、SEXI(Statement, Explanation, Impact)、TAIL (Thesis, Analysis, Impact, Link)などは聞いたことあると思いますが、それにとらわれすぎずにその分析に合った説明を心掛けています。一つ挙げると、大事な分析に関しては、Bullet Point(キーワードや専門用語。一言で表す。体言止め。メモを取りやすくするため。)をまず述べてから、Narrative(イラスト。こういう人がこういう状況でこう思ったり、行動したりするっていう説明。モーションの文脈におけるその分析の意味の説明。本質的には一緒でも、複数挙げる。)、Explanation(それが起きる理由や実例。)、Conclusion(分析で示したかったことのニュアンスや方向性の明示化。Implicationを示す。)という分析の立て方をしています。別のも上げると、二つの世界の違いや比較をわかりやすくしたい場合は、Bullet Point、GOVの世界の説明とそうなる理由・例、OPPの世界の説明とその理由・例、帰結と言う形で同じ視点のものを両方の世界に関して説明する形もあります。こんな感じで分析の出し方や説明方法も色々試しています。

 次にスタイル(マナー)に関してです。次の分析や分析内の次の段階に行くときに分かりやすくするように心がけています。ナンバリングの前後、分析の前後、一つの分析の中でOPP世界やGOV世界の説明に行くとき、分析内の理由を言う前の言葉の前後(becauseの前後)、クエスチョンの前後に少し間を挟んだり、トーンを変更したりしています。こうすることで、次の説明に行くときにシグナルして集中しなおしてほしいタイミングを掲示したり、理由の多さが重視される現代のディベートの中でメモしやすくしたり、分析内での段階の変化に気付いてほしかったり、自分自身も含めて考える時間を作ったりすることを意図しています。

 これらを身に付ける練習は基本的に、上で挙げたスピ練やプレパ練、試合で意識して、録音して聞き直して復習するといいと思います。他にできることも挙げておきます。

 第一に、ジャッジです。ジャッジ視点でどういう時に勝ち筋が分かりやすいか、どういう時に話が追いやすいか、メモを取りやすいかを考えたりして自分のスピーチに活かします。またジャッジでないときも含め、毎回の試合後に自分だったらこういうOAの構成にするなぁ、今回はここのイシューやキャラの争いが重要にだったなぁ、こういう切り口が良かったなぁ、相手を踏まえるとこういう言い方がよかったなぁっていうのを考えています。このように、ジャッジに「伝える」ことを意識するためにジャッジ視点で考えることを意識しています。

 第二に、プレパで箱を考える練習です。サインポストをどういう感じにするか、どういう話をするか(立てたいStatementやクエスチョンリスト)を意識しています。分析ももちろん大事ですが、そこはいったん保留してどういう構成だといいかを考えています。もちろん箱を考える過程で細かい分析や念頭にすることもあります。箱を考えることで分かりやすくなるし、考えないといけない箱を考えることができるので、意識として重要だと思います。サインポストや箱に加えて、①イントロを考えることで、メインのメッセージや勝ち筋を伝える・考える練習になったり、②モデル・セットアップ・スタンスを考えることでケースの前提となる世界観をわかりやすくしたり(曖昧なモーションやnarrativeなモーションでは土台として特に重要)、相手の話を削ったり、preemptionを入れたりする練習になります。

 これらは伸ばすのに時間かかるものですが、自分のケースやマターを最大化する上で重要だと思います。

③What to Say

 何をいうかは広すぎるので、今回は戦略的に何を言うか、選択肢から選ぶかに関して少し書きます。ここは他より短めにします。

 まず前提として、モーションを見てからアイディアを出すうえで、考えていることをいくつか挙げます。二つの世界はそれぞれどのようなものか?比較される世界は何か?メカニズムは自分たちの世界「だけ」で起きることなのか?自分たちの世界だけで解決される問題は何か?細分化して考えた時にどのようなアクターがいてどのような反応するか?(細分化して考える)なるべく具体的に落とすとどのようなアクターが影響を受けるのか?相手の反論や議論にどう対応するか?どのように自分たちの議論を見せるか?ジャッジにどう捉えてほしいか?プリンシプルは何か?

 特に重視しているのは、二つの動いている世界の比較は何でモーションから抽出される差(Exclusivity・Uniqueness)は何か、その差の重要性は何かという視点です。現代ディベートでは特に重視されていると思います。ちなみに自分のイメージではGOVの動いている世界とOPPの動いている世界の比較や二つの世界の差を考えるモーションが多いと思います。空間軸とそれぞれの世界の時間軸の両方が融合しているイメージで捉えています。これらを踏まえた上で、どう戦略を考えているか、少しだけ挙げたいと思います。

 第一に、戦略を考えることを意識していました。バーデン、チームの強み/弱み、思いついている分析、知っている知識などに基づき、勝ち取ることができ、重要だと示せる議論を選ぶようにしています。また試合における脅威も踏まえて一番勝ちやすい戦略を考えました。例えば、相手の強い立論は何か、相手から来ると困る反論は何か、相手と争いになる前提やキャラは何か、証明に労力がいるレイヤーは何か、exclusivity(世界観の差)がわかりやすいか、直感的でない部分は何かなどです。常に相手が強い場合、ジャッジとの相性が良くない場合を想定したり、どの部屋でも油断をしないようにしたりしています。

 第二に、どの議論、基準、アクターで勝ちに行くのかの優先順位付けを意識していました。BPディスカッションでは15分しかない中で、そこまで良くないジャッジもどうしてもいる中で、取捨選択した中での深い議論を立てることが大事だと思います。メインメッセージを確実に伝え、この議論を立ててこういうことをしようとしていたチームとして認識してもらえるようにしました。モーションの性質にもよりますが、勝ち筋1〜3個それぞれOPP世界、GOV世界、インパクト、比較(Weighing)、コンテキスト/キャラなどを完成し切るように注意しました。

 最後に、GOVとOPPで割れているキャラやメカニズムなどのレイヤーとは無関係の議論や分析、または相手のベストケースや相手に好ましい前提でも立つ議論も立てるようにしています。物議を醸していない議論を立てられると、ジャッジとしても扱いやすく、勝ちしやすくなるので、有効です。もちろん中身がしっかりしている必要はあります。

◎反論/比較/BP Deputy

 WUDCに向けて大きな課題としては不慣れなセカンドというロールへの対応がありました。これ以前の直近のBPの国際大会はファーストを中心に出ていたので、セカンド力を高めることが必要でした。反論が得意である馬場さんと組んでいる時は立論に専念していたので、短期間で一から自分なりのスタイルを確立していきました。正直、不安要素の一つで心配でしたが、結局本番のオープニングは5試合で10点で上手くいきました。

 現代ディベートでは相手の分析に対処できなかったり、ドロップしたりすると、かなり響きます。ドロップは単純に対面の相手に負けてしまったり、Closingから上回る要素を与えてしまったりします。反論と比較の精度を上げることを心かけていました。

 反論では効率性と効果を考慮しながら、取捨選択するように心がけていました。自分たちのケースの根幹となる部分にダメージがある相手の話は優先しました。分析一つ一つを返していくのは難しいと思ったので、自分なりのスタイルを考えました。相対的にインパクトを下げる反論・比較、相手の前提を否定する・重要なcharacterizationのバトルを勝ちにいく反論、インパクトを弱める反論、インパクトのExclusivityを削る反論などを意識していました。

 ちなみにExclusivityを削る系やNot mutually exclusive系の反論は、限られたexclusivityを前提に動いている試合や論題が多い中で、Exclusivityが少ないというレベルまで示したところで、Comparativeでなかったと、お互い様であることが多く、あまり効果的でない反論になりがちです。ただし、強くなりうるのはexclusivityを削った上で、その残ったexclusivityのvalueが低いというレベルまで示せた時、あるいは本当にExlcuivityを0にできた時だと最近、考えています。後者は相手の立論がしっかりとしている強い相手ならば、あまり起きることはないです。前者は思いつくことが少ないです。春T前に気付きました。

 勝っているperceptionを作るのが一番重要だと思っていたので、反論をしっかり試合に位置づけながら、打つようになるべく心がけていました。反論を最初にするというより、再立論もしながら、適切なタイミングやイシュー内で入れるようにしました。少しテクニカルですけれど、相手が使っていた具体例を自分の分析で使ってひっくり返したり、Even if 相手の前提が立っても〇〇だ・Even if 相手のベストケースに載ってもこの観点から優位だとアピールしたり、反論の結果のComparativeはAとBだと明示的に反論の結果を示したり、自分たちと比べた時に相手のfailureを示したり、ジャッジに反映される時にこうであるべきという形を明示的に示すように心がけていました。Doxbridge Worlds 2021で絶好調だった馬場さんのDeputyを参考にしておりました。僕自身の課題としてはキレのあるイシューの切り口を制圧した雰囲気は出しきれていなかったり、相手のメトリックをフリップすることはできていなかったりした試合が多かったと思います。

 大岡山練で、ある先輩がセカンドもウィップと近い感じでやっているとおっしゃっていたのですが、その感覚が最近になって少しだけわかったような気がします。対面・オープニングの戦いを上回っていることをパートナーのマテリアルや反論を用いて示すのに加え、Openingから最も重要なIssueを収めた、最も重要なCharacterizationを証明したというフレーミングや比較を積極的に織り込むようにしました。これはContributionが証明しきれていることが前提ですが、この観点からこういう理由で最も重要なContributionであると先に証明しておくことで、Closingや対面からの比較がないときに優位になったり、勝っている印象を作れたりします。ちなみにファーストからこれらの要素を織り込むことも可能です。

 新しく少しできるようになったのはこういった形ですが、試合やイシューによって使い分けていました。もともと自分がやることが多かったメンバーに近いBP Deputyです。結局試合で勝つために一番必要なことをやればよく、BP Deputyの場合はWhipと違って新しい立論も認められているので、必要に応じて新しい分析や話を立てていました。相手のメトリックをフリップする系の話や後ろがいいそうなことをグラブしたりする話は試合によっては有効です。ただ今回の場合、強いと思った話ほぼ全部細かくファーストに渡していたので、そんなにやっていないです。

◎POI

 得意っていうわけではないですが、今までのWUDCとの違いなので、触れておきます。今大会からPOIがMandatoryに変わりました。実はNEADC 2020でDCAをやった時にMandatory POIを提案してそういうルールでやった時もあったのですが、個人的に導入するのはいいことなのかなと思います。特にオンラインになってからは自分も含めてPOIがなんとなく減っていたような気がしていたので。練習から積極的にPOIを取り合って練習していきましょう。

☆大会中のメンタル

◎修正能力

 ジャッジのフィードバックを聞いて、納得して修正できるところは修正していきました。例えば、R5でインパクトのWeighingが必要と言われ、R6の立論で、それを反映しました。また自分の音源も大会中に聞いて改善点を考えながら、取り組むようにしました。特に基礎的なことが意外と出来なくなることがあるので、注意するようにしています。

◎土壇場での勝負力

 元々は重要な場面で非常に弱かったです。ABP 2019 R6では3位以上でEFLブレイクできる中で負けたり、WUDC 2020 R9でも1位とらなければESLブレイクできない状況で4位取ったりしてしまうこともありました。OGでバブルラウンドで言うと、AEDC 2020とAPAD 2020の時に勝てなかったです。全然勝てなくて少しトラウマだったんですけれど、緊張に対する捉え方を変えたり、場数を踏んだりした結果、前よりよくなっている気がします。ちなみに緊張に対しては、あって仕方ないもの、勝ちたいと思っているからこそ、今まで頑張ってきたからこそ、緊張しているから、いい心理状態だと言い聞かせるようにしています(笑)。特に印象に残っているのは、ABP 2020での前半3ラウンド3点という絶望的な状況から、後半3ラウンド8点を取った経験です。あとR9と少し似たような展開だったのは、去年の秋Tです。R3で3位取って、R4にも引きずって、プレパの前半、何も浮かんでいなかったんですけど、後半に落ち着きを取り戻して過去最高のCGの一つをできました。こういった経験が生きたのかなと思います。R9は思考停止したときは落ち着けばどうにかなるって自分に言い聞かせました(笑)。色々な経験が今回に活きたと思います。

◎Glass Ceilingを崩すこと

 強い相手でも勝てるというマインドセットを持つことは重要だと思います。どんなに強い相手でもミスすることがありますし、勝ち筋が残る可能性はあります。ディベートは競技の性質的にモーションと、サイド、ジャッジとの相性など運の要素もある程度ある競技なのでと思います。その勝てる可能性を冷静に気づけるのが大事かなと思います。僕自身は運よく実際そういった経験をできたことで、そういうマインドを持てるようになりました。Taiwan Debate Open 2020 R5でSydney A (WUDC 2021 SF)、Restricted Mara Open 2020 R3でEUDC 2018 GF、Australs 2020 でMonash Australia A (Australs 2020/WUDC 2021 Open Break)、Doxbridge Worlds 2021でWSDC 2018 Championへの勝利。今大会も運よくR6でHWS Round Robin 2020 Championに勝てたのも、今までの格上に勝った経験からチャレンジャーの気持ちを持てたのが大きかったと思います。

☆その他ディベートに関して

◎前回との対戦相手の違い

 前回は基本サブマリン気味だったので、オープンブレイクしたチームと1チームしか当たらなかったです。今回は5チームくらいとオープンブレイクしたチームとあたり、2勝3敗でした。前回よりオープンブレイクの相手と戦える位置まで持って行けたのはよかったと思います。ここまで来たからこそ、見えてきた課題もありました。

◎得意・苦手分野のアプローチ

 得意分野を伸ばしたのが良かったです。例えば、僕の場合、経済系のモーションは平均が2.5点くらいなので、出た場合に点数を見込めるモーションです。そもそも経済学部だし、自分のロジックを中心としたスタイルと相性がいいジャンルということもあり、得意になりました。苦手意識を持っている人も多い分野でもあるので、自分より格上の相手にも勝てるという意味で武器になっていたと思います。相手に関わらず、自信のある分野や一位が狙える分野が増えると、ブレイクに必要な点数に届きやすくなると感じました。他に得意なジャンルは、環境、フェミニズム、政治、IRあたりで、ロジック系のモーション、リサーチや復習、基礎理論、クッキーカッターが生きやすいモーションでした。これらは予選で出る確率が高いモーションで、以前と比べて成績の安定につながっていると思います。リサーチやケース練でより分析をしたり、こういう系が得意でない人にも分かりやすい説明方法や例を考えたりしてより得意をどんどん伸ばしたのがよかったと思います。

 一方で、致命的な弱点がありました。物にもよるのですが、傾向として、Narrative系・ふわっと系・Education・Religionなどが苦手でした。JBPをきっかけに、CharacterizationやContextの技術を高めたり、具体的アクターに落とす意識を強くしたりすることで前よりよくなりました。またそれにとらわれすぎず、自分のスタイル(ロジック・理論化・パターン化)を導入してみました。R4はnarrative系モーションで一位取れてよかったです。まだ試行錯誤中ですけれど、徐々によくしていきたいです。

 得意と苦手にそれぞれ取り組んだことで、R5・R6ではオープンブレイクしたチームに勝利し、R6終了時点で13点でオープンブレイク圏内には入れました。ただし、その後に重要な場面で勝利できたり、9ラウンドを通して安定したパフォーマンスを発揮出来たりするのが最終的に重要だと感じました。

◎メモの書き方

 2月のAUDCの時に練習のために紙減らしたり、紙の折り方を変えたり、メモの書き方を大きく変えたら、本当に良くなったので、継続しました。今の僕の場合、B5ルーズリーフを縦に4等分しています。昔は普通にB5のまま、スペースを取りながら、書いていたんですけれど、いろいろ試してこれにたどり着きました。Openingの時はそれを1~2枚、Closingは3~4枚くらい使っています。紙の数が減ったころで、全体が見渡しやすくなって、全体の流れや足りない部分を意識できるようになりました。紙の量も減って環境にも少し良くなりました。

 省略も使っています。ex)(example)、ei〇(even if)、Q(Question・レイヤーごとの箱)、b/(becuase)、Al(Alternative)、Cf(Counterfactual)など。これらはよく使う表現なのに加え、スピーチの時に間を空けてから読んだり、強調したりしている部分なので、分かりやすくしています。

 分析の一番上にキーワード・Bulle Pointを書いて、すぐに連想できるようにしています。また分析ごとにもスペースを作って書き加えをできるようにしたり、間をとるタイミングを分かりやすくしています。

 ペンに関してはいつでも消せながら、シャーペンとかより読みやすいフリクションを使っています。試合によってはオレンジや水色を使って相手の話や相手への反論をわかりやすくしています。

 直前への反論が重要な時は、メモを減らしています。がっつり書いている時は相手の話を聞くのは難しくなるから、メモを減らして書いている時間を減らせるようにするのは有効であると思います。見れば考えた反論を連想できるように、キーワードだけ丁寧に書きます。僕の場合、あとは覚えるために書いている感じです。Lee Chin Weeや馬場さんは本当に一言しか書いていない時があるらしくて、反論しないといけない部分だけメモしておいて、反論自体は書かない時もあるらしいです。横にdestroyとか書いているらしいです。とはいえ、ちゃんと書いてスピーチする時期もレトリックやストラクチャーとか蓄積する上で重要だから、メモ減らすのは徐々に試したり、必要な時だけやったりするのもありだと思います。

 エクステンションの時は細かいところのニュアンスも丁寧にしたり、なるべくスピーチを分かりやすく、充実させたりするために丁寧めに書いています。プレパの段階では1枚目に箱やそれぞれの箱の分析のキーワードだけを書いて、選択肢を増やしたり、全体像を考えたりしています。試合中に軽く相手のメモを取りながら、状況を見ながら詰めていきます。

 字はきれいに書いていなくて読みにくいと思いますが、最近の試合のメモを一つ一応載せておきます(WUDCの次に出たTAYDOのR4のCGで、WUDC Semifinalistを倒して83を取った時のメモ)。https://drive.google.com/file/d/1ciblT_CXBBRk7V69KU-BeqLG1kpGeFck/view?usp=sharing

 他の人のメモを見ていると、人それぞれなので、色々と試して自分に合った形を見つけていくのがいいと思います。

◎ポジションの対応力

 ポジション別成績を見ると、OG3試合5点、OO2試合5点、CG2試合0点、CO2試合6点、(GOV5試合7点、OPP4試合11点で)明らかにCGが足を引っ張っているという結果が出ました。前回と同様、OPPの方が極端に(笑)よかったです。改善点としてはOGが前より苦手意識がなくなりました。最近、特にCGでよく負けてる気がします。OGである程度できたので、その時のように改善方法を考えて次の大会では上手く行くようにしたいです。(後日、TAYDOのR4で強い相手にCGで一位取れてとりあえず短期的な目標を達成しました!)また4位を3回も取ってしまったので、4位回避の術も身に着けないといけないと感じています。

☆観光・休息・食事

◎観光

 築地のビジネスホテルの一室をAirbnbで借りました。対面で集まった方が連携面でよかったので、借りました。今まではレンタルスペースを使っていたんですけれど、試合が終わるのが終電の時間より遅かったので、借りることにしました。実際、遅延で終わるの2:30とかあったので、正解でした(笑)。インターネットは若干遅くてスピーチ中に映像をオンにするのを諦めましたが、基本的に快適に過ごせました。コスパがすごいよかったです。

 おいしいものを食べるのが好きなので、それも楽しみました。Uberで焼き魚定食の弁当を頼んだり、先輩に紹介していただいたハンバーガーをテイクアウトで食べたり、近くのたこ焼きや牛丼をテイクアウトして食べたり、近くのお店に行ったりしていました。築地外市場が目の前にあったので、海鮮丼、浜焼き、生カキ、卵焼きなどを食べました。生カキは試合前はリスキーだと言われたけれど、お腹を壊すことほぼないので、自分を信じて大丈夫だと思って食べました(笑)。やっぱり大丈夫でした(笑)。銀座の街並みや歌舞伎座、築地本願寺なども近かったので、行きました。他にもあんみつやかき氷、カフェ、しゃぶしゃぶにも行きました。自分が食べたものなんとなく全部挙げましたが、食べてばかりですね。。。笑 頑張っているからいいかって思って贅沢しました(笑)。

 土日は試合がない日中の時間帯にKDSや他大学の友達が何人か近くに来てくれて、おしゃべりしたり、おいしいものを食べたり、とても楽しく過ごせました。(来てくれてありがとう!)

 こんな感じで、なんだかんだ少し対面でのWUDCっぽく過ごせました。

◎休息・睡眠

 試合は遅延や時差の関係で終わるのは2:30とかでした。試合の終わりが一日の終わりにあったり、予選が長かったりするので、コンディション調整がより重要になりました。大会中、特に予選中はどんな大会でも、緊張したり、考え事をしてしまったりしてあまり眠れなくなるタイプなので、結構大変です(笑)。9割くらいの大会6時間を切っています。それをわかっていたので、今回はかなり考えました。試合後はシャワーを浴び、YouTubeで動画をいくつか見て、使い捨ての蒸気のアイマスクを装着し、ASMRを聞いて快眠のためのルーティンを心がけていました(笑)。最初の三日はmibandのアプリによると、量的にも質的にもよく寝れていたのですが、後半のサイレントラウンド前はあまりよく眠れなかったです。。あと徐々に慣れちゃって効果が薄まりました。。でも、対策の結果、きっといつもよりは良かったです!(前半、上手くいっていたから、精神状態が良かっただけっていう可能性もあり。。笑)

◎大会中のメンタルコントロール

 通常のWUDCは予選3日で9試合(3-3-3)なのですが、今回は予選5日で9試合(2-2-2-2-1)でした。特にサイレントラウンド(直後にOAが聞けないラウンド)が2日にわたるもので大変でした。一人でいてもWUDCのことを考えてしまい、そわそわしてしまうので、友達や先輩と会ったり、喋ったり、ラインしたりして気分転換するようにしました。同日の試合間でも時間がだいぶあるので、上記のように、何か食べたり、雑談したり、誰かとラインしたりしてなるべくリラックスするように心がけました。

☆試合の振り返り

 上で書いたことと結びつくところや補足とイメージとなるところもあるかもしれないので、簡潔に振り返りを書きます。

・ラウンド ポジション 順位 通算

◎R1 OG 2位 77 1試合2点

TH, as South Korea, would aim to significantly increase its cross-border economic cooperation with North Korea

 初戦からいきなりご当地モーション来るのは予想していなかったですけれど、そこまで難しいものではなかったので、大丈夫でした。COのチームが強かったです。WUDC 2021 Open QF・Open 20th Breakの成績を出していましたが、納得しました。少し説明の精度が上がっていないと感じたので、次のラウンド以降、注意するようにしました。

◎R2 CG 4位 77 2試合2点

THW ban social media companies from independently deplatforming politicians

 プリンシプルのインパクトを軸としたケースを出しました。信頼しているパネルの1人は2位でしたが、チェアのジャッジは4位ということで、結局4位になってしまいました。反省点としては相手のコンテキストに乗っかった上でも刺さる話をもう一つの軸にするべきだったと思います。またAnalogyの使用やモーションのニュアンスの反映など、プリンシプルの立て方が甘かったです。

◎R3 OO 1位 79 3試合5点

TH prefers environmental movements heavily prioritizing a local agenda over a global one (e.g., focusing on local pollution rather than climate change)

 最初はCOがマジョリティだったみたいですが、アテネオのパネルがチェアを説得してくれたおかげで1位を取れました。Weighing/Impactingをしてなぜこのステイクホルダーを動かすことがenvironmental movementsにとって重要なのか、なぜこの事象が重要なのかを分析したのが大きかったです。

◎R4 CO 1位 80 4試合8点

THO the glorification of professional esports players

 1つ目のエクステンションでは、E-sportsやゲームの文脈におけるGOVの世界でのStigmatizationを埋めながら、glorificationによって何が描かれ、人々がどう受け止め、どう良くなるかを分析しました。2つ目のエクステンションでは、長時間プレイしてしまうことによるharmをOGが立てていたので、glorification of playerがあったほうがそういった習慣を正せるという相手の話をflipするargumentを立てました。元々narrative系のモーションに苦手意識あったので、重点的に対策した成果を出せてよかったです。

◎R5 CO 1位 80 5試合11点

TH opposes the general approach of companies to grow by massively sacrificing short-term profitability with the hope of gaining a large portion of the market* *e.g. the original business model of companies such as Uber or Amazon

 経済モーションで、しかもジャッジがDCAのConnorで相性がいいジャッジだったので、試合前の時点でこれはチャンスだと思いました。モーションを見ていけると思いました。どのようなコンテキストで生じるビジネスモデルかを分析した上で投資家のインセンティブ、ビジネスモデルの成功可能性、イノベーションのインパクトを出していきました。反省点としてはインパクトへの時間配分をもっと増やし、具体的な人に落とした上で比較に持ちこべば良かったと思います。

◎R6 OO 2位 79 6試合13点

THBT it is in the interest of the Catholic church to officially recognize Folk Saints

Folk Saints are dead people recognized by the general population as saints who were not officially acknowledged as saints by the Catholic church. Unlike regular saints, they lived lives that the church considers sinful. They are popular in many regions, especially in Latin America. Examples include Sarita Colonia that answers the prayers of sex workers & LGBT people; and Juan Soldado that answers the prayers of people who commit low-level crimes out of financial desperation.

 当初、Tokyo Aと対面で当たるマッチアップでしたが、R5のBallotの結果に誤りがあり、ドローのやり直しになりました。この大事な局面であまり当たりたくなかったので、回避できてよかったなぁと安心していたら、5試合終了時点で12点の部屋にプルアップされました。まじかと思いましたが、得意のOOだし、やれることやれば、勝てるはずと思って挑みました。結果は2位、COのTaylor’s Aに負けてしまいましたが、なんと去年のHWS Round RobinのチャンピオンであるYale 1に勝利しました。

 6試合13点という形でオープンラウンド(ジャッジによるOral Adjudictionがあり、結果がわかるラウンド)を終えました。正直全く現実味がなかったです。日本チームでもオープンラウンドでこの結果は史上2番目で、妄想ですら想像していなかった展開です。

◎R7 OG 4位 78 7試合13点

THBT pursuing strong expansionist policies* in the Arctic region is in the Russian interest *Including but not limited to: building artificial islands in order to claim additional territory, trying to significantly limit foreign presence, stationing warships and troops

 正直に言うと、ロシアや北極はあまりマークしていませんでした。その上、ラウンドの部屋は高かったです。CGにAustrals GFのシドニーのファーストの人(WUDC 2021 Open Break)、COにAmrit & Dominic(WUDC 2021 Open 3rd Break & Open SF)がいました。知識不足とComparativeの意識やAlternativeへの対処が甘くて負けてしまいました。

◎R8 CG 4位 75 8試合13点

TH opposes the academisation* of social justice movements *The increasingly significant presence of academics and academic terminology, processes and structures in many parts of the world

 分析レベルで思いつくけれど、パッケージとしてなかなかいい話が思いつかなくて今大会で一番ケースを思いつくのに、苦戦しました。最初に思いついた路線の先入観にとらわれてしまったり、取捨選択を冷静に考えられなかったりしました。ESL QFと同じくらい、悔いがある試合です。

◎R9 OG 1位 79 9試合16点

THBT states should classify organized crime syndicates as terrorist groups* *classification as a terrorist group would legally allow law enforcement to pursue tactics such as targeted extra-judicial killings, reducing barriers to law enforcement gathering evidence, using military forces, criminalizing membership, etc

 オープンラウンド13点の絶好調の中でR7とR8で4位取って、ESLブレイクのためにあまり得意でないOGで1位が必須だとわかってすごいプレッシャーでした。本気で一旦思考が止まった瞬間がありました(笑)。モーションのテーマとしては前回大会でも出ており、ある程度わかるものでした。補足に書いているclassification as terroristの諸要素とプラスアルファで思いついた要素を軸に強そうなcomparativeをなるべく多く考えました。

☆過去のブログ

 一応載せておきます。考え方が変わっている部分もあるので、ご了承ください。上級生の時の方が相対的に上手く書けたと思います。

・1年生

ADI

http://keiodebate.org/blog/all-you-need-to-know-about-adi/

BDO

http://keiodebate.org/blog/everything-is-practice/

・2年生

TDO

http://keiodebate.org/blog/taiwan-debate-open-2019/

SMU BP IV

http://keiodebate.org/blog/smubpiv_2019/

WUDC 2020

http://keiodebate.org/blog/wudc_2020/

・3年生

Judge (UADC, NEADCなど)

http://keiodebate.org/blog/judge_blog_2020/

 

☆写真

電球がたくさんあってスタジオみたいでした笑

うれしかった

対面の表彰式がなくなって、最近、チームで写真を取ることがないなぁって思ったので、撮ってみました~

おいしかった!

近くにありました~

おいしかった!(パート2)

おいしかった(パート3・4)

おいしかった!(パート5)他にもあるけど、このくらいにしておきます笑


Results of WUDC 2021
ESL Quarter Finalist : Keio1 (Toshiya Ozawa, Yohei Horiguchi)